暁のヨナ_緋の光_

朱雀 ページ40

これは緋龍が王になる少し前の話







人となった緋龍は自身に芽生え始める
"邪の心"を恐れ怯えた

人故のその心

けれど龍神であった緋龍には
理解できない感情だったのだ


"この心はいらない
どうか私の元から去って行っておくれ…"


緋龍から抜け落ちか邪の心

それはいつしか
"命"を持ってしまった


本能のままただ暴れ
土地や人々を焼き払い
全てを焼き尽くす火の鳥"朱雀"

それが緋龍の邪心の姿だった





ただひたすら暴れ狂う自身の邪の化身に
心を痛めた王は

"朱雀"に人の心を分け与え
"朱雀"はその姿を人間の女性へと変えた


知性、理性…自我を持った朱雀は
自らが今までしてきた事の後悔の念に苛まれ悲しみ
そして
自身を生み出した緋龍をひどく憎んだ




"なぜ私なんかを生み出したのですか
私は多くの人の命をこの手で…

なぜです
なぜ私に感情を与えたのです

こんな気持ち
知りたくはなかった…"




涙を流し悲しむ朱雀





一度は排除しようとした邪の心
緋龍は"ソレ"と対面し始めて気が付いた

邪心とはなんとも脆く…
なんとも寂しい感情なのだ

なんて…
なんて愛しい

この邪心も含めて人は人なのだと

緋龍は朱雀を想い側に寄り添った






後に彼は
数々の紛争を鎮め高華国の王となる









緋龍と四龍の戦士…そして民の愛情を受け
朱雀の心の傷はだんだんと癒えていった





二人はとても幸せだった




緋龍は朱雀を愛し
朱雀もまた緋龍を許し愛していたのだ






けれど




幸せな日々はそう長くは続かない




朱雀に命を与えた緋龍王の命は弱まり
若くしてこの世を去ることになる





自分を責め
自分の存在を受け入れられなくなった朱雀は
自身の身体を焼き尽くし

その魂は何処かへと消えていった



またいつか
逢えると信じて…

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