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……いた。いつもの場所にワンちゃんなんか連れてるし。遠目で見ながら可愛いな、なんて思ってしまった。本当にいるかなんて分かんないし会える確率の方が低いのに、連絡手段もないまま来ちゃったけど２度あることは３度ある。また会えた。海辺に出て近付いて、声をかけた。
「Aちゃん」
「……嘘でしょ、」
「本物です」
「……月末じゃないのに」
「ほぼ月末じゃん」
「わ、ジロちゃん！」
リードが外れて俺の元へ走ってきたトイプードルのジロちゃんだって。こんな可愛いのにオスなのかお前。抱き抱えて砂浜を歩くとAちゃんも若干の距離を取って歩き出した。
「ジロちゃん？」
「……あ、近所のおばあちゃん家のワンちゃんなの」
「おぉ、かわいいなあ、おまえ」
「……かわいいって私に言ったのかと思った」
「可愛いよ、Aちゃんも」
「……そういうのいいです、」
「ほんとだって」
「…………」
「え？！」
パッと後ろを振り向いたら砂浜にしゃがんで蹲るAちゃん。顔を腕の中に埋めて泣いてんの？！は？！俺なんかした？可愛いって言ったのがそんなにダメだった？……本当に思ったことなんだけどな。
「え、ちょちょちょ、嘘！なんで？」
「……違うんです、ほんとに、すいません、」
「いやいや、俺がなんかしちゃったんなら謝るし」
「違う、……ジロちゃん連れてる紫耀くんを見れるなんて意味分かんなくて、」
「……え、あぁ、そういう感じ？」
理由が可愛すぎて無理なんだが。そんなに喜んでくれんなら元祖ジロちゃんがいくらでも散歩しますよ。
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作者名：詠夢
| 作成日時：2021年9月15日 19時
