(S) ページ8
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「ジロちゃんも幸せそう」
「いつも散歩してんの?」
「うん、おばあちゃん歩くの大変だから」
「そっか、優しいね」
「私、そこの雑貨屋で店長してます」
「え、どこ?」
「あそこ、」
〈 Ranunculus 〉と書かれた看板を指差して風に靡いた髪の毛に目を奪われた。目線が絡まるとAちゃんはキョトンと首を傾げて、ねじれたフープのピアスが揺れた。
「そのピアスもあそこで売ってる?」
「……あ、うん、」
「可愛いよ、似合ってる」
本当に思ってることしか言わないから、俺。
「てかさ、店長ってことは何歳?」
「24」
「え、タメじゃん」
「うん」
「先に言ってよ!」
「聞かれなかったし、私はタメだって分かってたし、」
「あぁ、そっか」
照れると瞬きの回数が増えることとか、笑うときはいつも目を伏せることとか、泣くときは前触れがないこととか、俺のファンだとか言いながら全く俺に取り入ってくることもなくて、一定の距離を確保してる感じがまた落ち着いた。
「じゃあ、仕事戻ります」
「あ、うん、頑張って」
「紫耀くんも頑張ってください」
「……ありがとう」
いくらでも頑張れる気がした。ジロちゃんを連れて去って行く背中を惜しみなく見つめた。3回目にして、俺多分この子に惹かれてて、認めることが怖くて、その日の運転は荒かったように思う。高速をかっ飛ばして、BGMの洋楽は頭に入ってこなかった。
会いたい、また会いたい。そんな気持ちだけが俺の原動力だった。
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My love for you will never change→←(S)
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作者名:詠夢 | 作成日時:2021年9月15日 19時