26,冷酷 ページ32
冷たい彼の視線に気圧されて、口を開くこともままならなくなってしまったが…なんとか言葉を発した。
「ジンペイ君は…確かに、ふざけ過ぎるところもあるよ。でも…一生懸命、Y学園の七不思議を…」
解決してる、と言いかけたところで「そもそも」と彼は話を遮った。
「あのクラブは元々YSP…即ち『妖怪スペシャルパワー』の持ち主のクラブだ。…君が、いるべきところではない」
「…それって、私じゃ役不足って意味かな。」
そう問いかけた私の質問には答えてくれず、1つため息を着いて彼は言った。
「…悪いことは言わないから、抜けた方がいいと思うぞ」
バッサリと言い放たれたその言葉に、チクリと胸が痛む。痛む心とは対照的に、強気な口調で叫んだ。
「どうして…?だって…私は……」
そこで止まった。
──私は、YSPクラブに何をした?
七不思議の解決にも関わっていない。何かしら、手助けになったこともない。…確かに、役不足だ。
…言い返す言葉もなくなってしまった私から出たのは、実に情けない言葉で。
「…いつから、そんな風になっちゃったの…」
本当に、情けない。
こんな事を聞きに来たつもりじゃないのに。
細々と出たその言葉に、さっきまでの威勢なんてなかった。
「…元からだ。」
「嘘。だって…昔のラント君は、もっと……」
「子供なんて、成長過程でいくらでも性格は変わるだろう?……要件はそれだけか?」
確かにその通りだ。環境が変われば、子供の性格なんていとも容易く変わってしまう。
「……うん」
「それなら、早く部屋に戻りなさい。本来なら、この時間に人の…それも、男の先輩の部屋を訪ねた時点で指導に値するのだが……今回は見逃してやろう」
「…分かったよ。…ありがとう」
「…それと、昔はどうであれ…学園では先輩と後輩なんだ。…「ラント君」はやめてくれ」
そう言われた途端、繋いでいた何かが切れた気がした。…ダメだ、涙が溢れてくる。
燃え尽きそうなくらい痛む喉を抑えて、私は精一杯答えた。
「…はい。…失礼しました、「霧隠先輩」。」
──最後の最後、上手く笑えてたかどうかなんて、分からない。
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ユーリ(プロフ) - るーんさん» ありがとうございます!!なんと言いますか...上手くいかない、不器用で少し悲しい、だけどその分幸せになる...というか、そんな感じの小説を書きたかったので、キャラクターたちの心情をメインに、詳しく書くようにしています笑 頭は....あんまり良くないです(泣) (2020年1月30日 17時) (レス) id: 98829acb9e (このIDを非表示/違反報告)
るーん - ユーリさん» かっこいいですよね!霧隠ラント君!アニメのラント君もこの小説で見るラント君も大好きです!この小説は文が丁寧で読んでてとっても面白いです!頭が良いお方ですか!? (2020年1月30日 17時) (レス) id: b0ef9d9d52 (このIDを非表示/違反報告)
ユーリ(プロフ) - るーんさん» 初めまして!コメントありがとうございます。まさかのアニメを見て惚れた方!?アニメの方よりも、不器用な感じのラント君ですが...好きになって頂けたなら嬉しいです!ありがとうございます! (2020年1月29日 20時) (レス) id: 98829acb9e (このIDを非表示/違反報告)
るーん - はじめまして!アニメを見て霧隠ラント君が好きになってしまいました。(笑)一目惚れです。でもこの小説を読んで200倍好きになってしまいました!これから更新頑張ってください!毎日の楽しみにします! (2020年1月29日 20時) (レス) id: b0ef9d9d52 (このIDを非表示/違反報告)
ユーリ(プロフ) - あめさん» 初めまして!!温かいお言葉をありがとうございます...色々と考えて書いているので、本当に嬉しいです。霧隠推しの方からそう言っていただけると、少し自信が着きますね(笑)なるべく更新出来るよう頑張りますので、これからもmarionette dollをよろしくお願いします! (2020年1月24日 16時) (レス) id: 98829acb9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユーリ | 作成日時:2020年1月12日 15時