marionette doll【霧隠ラント】

21，芸能基準 ページ27

「私、今はメカニックでいっぱいなの。そっちに集中したいから…恋人は、まだ要らないかな」

そう言って、はにかむフブキ。
…そうか、他に集中出来ることを見つけるのは、いいことかとしれない。…ぼーっとしてると、自然とラント君のこと考えてるからな……本当、どんだけ好きなのよ私。

「……私もなにか、集中出来ることないかなぁ…」

声に出ていた私の疑問に対し、フブキは一つ案を出してくれた。

「うーん…私みたいに、学んでいるものが趣味…とかの人は多いんじゃないかな？…でも、芸能基準だとちょっと違ってきちゃうか…Aって、芸能基準は芸能基準でも…何やってるの？ほら、モデルとか、アイドルとか…」

フブキの脳内に浮かんでいるのは、それこそまさに
テレビに映って、キラキラ輝いている少女達なのだろう。…が、私は残念ながらアイドルでもなければ、モデルでもない。

「テレビとかじゃなくて…私は、演劇での芸能基準なの。最近は、中学校入学を期に休業中だけどね」

とは言っても、女優と言えるほどでもなく…強いて言うなら劇団員レベルの私の事なんて、知っているのだろうか…。
そもそも演劇自体に興味が無い子はたくさんいるのだから、フブキが知っている可能性は低いだろうな。

「凄いね、演劇専攻の芸能基準って、多分A意外いないんじゃないかな…？…Aって、どんな劇にてでたの？」

きた。この質問……正直あの劇は、どうしても悲しい気持ちになってしまうものだから…あまり掘り返したくはないのだが。…そもそもあの歳の子供にやらせていい内容ではなかったような気がしてきた。
しかし、今更グダグダ言っていたって仕方がない。
知らないときは、そのときだ。

「一応1番有名──っていうか、主演をやらせてもらってた…貰っているのが、『Ｍarionette Doll』っていう作品で…」

知らない、と答えるのだろう…と私は少し身構えていた
本当は、もう少し色々作品の紹介もして見たかったのだが、仮に興味がなかった場合、そんなのただの拷問だ。
とりあえずは、ここら辺で話を辞めておこう…知らなくても当たり障りのない紹介をしたんじゃないか…？と思っていると…フブキから返ってきた回答は、予想外のものだった。

「嘘！？凄い！！！私、あの劇見に行ったの！！主役のお人形さんの世界にすっかり引き込まれちゃって…こ、こんなところで会えるなんて…！！」

私の手を取り、ブンブン振り回す。
どうやら、彼女は本当に『Ｍarionette Doll』を見に来てくれていたらしい

22，末路→←20，彼女の恋話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す