終わりまでのカウントダウン【灰谷蘭】 (ページ8)

今日:1 hit、昨日:4 hit、合計:16,687 hit

8日目ページ8

私は現在先輩の教室で先輩を待っています。

"一緒に帰ろー"

そのメールにすぐ返事を返せば先輩の教室で待っていて欲しいということで先輩の教室まで来た。

先輩と初めて会話したあの日のことはまだ昨日のように覚えている。
そっと先輩の机に触れなぞった。

「お待たせ♡」

後ろからギュッと抱きつかれ反射的に肩を揺らす。

『先輩…』

「昨日逃げられちゃって蘭ちゃん悲しかったなぁ〜」

まさか先輩から昨日のことを言われるとは思っておらずカチーンと固まる。

『あ、その…ごめんなさい』

「別に取って喰ったりしねぇ〜よ？」

あの日と同じ言葉。
この場所でその言葉は、まるで初日に戻ったようでなんだが嫌な気分になった。

あの日と違う行動を取りたいと思い必死に考える。
ふとここに来る途中で見かけた先輩達の姿を思い出した。

『先輩、1個お願い聞いて下さい？』

「なに」

『…先輩のネクタイが欲しい』

「なんだそれ、いいけど笑」

片手でネクタイを緩める先輩は色っぽかった。

「ど〜ぞ♡」

『ありがとうございます…！』

ワイシャツについていたリボンを外し先輩から渡されたネクタイを通す。
初めてのネクタイということと先輩のものということに心臓がドキドキと音を鳴らす。

『ん…あれ？』

実際やり方が分からず、試行錯誤する。

「…貸してみぃ〜」

いつの間にか先輩が後ろに立っていて私の手からネクタイを奪う。
慣れた手つきで後ろから覗き込んで結んでくれる先輩に先程からうるさい心臓が余計に音を鳴らした。

先輩の細くて綺麗なのに男の子っぽい手に目線が行く。
いつも優しく私の手を絡めるこの手に唐突に触れたくなった。

「手…邪魔笑」

『あ"…すみませんっ！』

気づいたら触れていたようで、すぐに手を引っ込めた。

「出来た。

ちゃんと覚えたかぁ〜？」

『み、見てませんでした…

もっかいしてください…』

「しょうがねぇなぁ〜」

せっかく結んでくれたネクタイをするりと解いて、またゆっくりと結び直してくれる。
今度はちゃんとネクタイを見て結び方を覚えた。

キュッと締められるネクタイと同時に先輩にお礼を言うために振り返った。

『ありっ…』

想像以上に近くにあった先輩のその顔に息が止まる。
先輩の綺麗なアメジストの瞳に吸い込まれるように私はゆっくりと目を閉じた。

唇にそっと触れた柔らかいもの。

ファーストキスはよく分からない味だった。