18 電話 ページ18
いつもの帰り道、いつも隣にいるはずの焦凍がいないだけで少し寂しく思えた。
暫く歩いているとプルルル、と着信音がしたので携帯を見ると焦凍からだった。
「もしもし、体調大丈夫？」
「大丈夫じゃねえ…。」
「まだ熱下がらないのか…。あ、そうだプリント渡すようにって相澤先生から頼まれてるからポスト入れとくね。」
そう答えるも焦凍からの返事が無いので不思議に思う。電波悪いのかなと思っていると、
「……て欲しい。」
「え？ごめん聞こえなかった。」
「家、来て欲しい」
「えっと…。うん、分かった。」
ぎこちなく返事をすると電話が切れツーツーツー、という虚しい話中音だけが残った。
はあ…と溜息を付きながら顔を触る。
熱い。
電話だと声が近いという事に加え熱で苦しいのか吐息混じりに聞こえた焦凍の声はやけに色っぽく感じた。
「私と焦凍はただの幼馴染。」
そう呟くと私は家へと再び歩き出した。
最寄り駅から少し歩くと閑静な住宅街の中に一際大きく目立つ日本家屋が見える。
それが焦凍の家だ。
私の家も何の縁あってか和風な見た目の家だが焦凍の家に比べれば大分小さい。
焦凍曰く冬美お姉さんも夏雄くんもいないらしいので勝手にお邪魔する。
「お邪魔します…。焦凍ー？入るよ？」
多少の罪悪感と肩身の狭さを感じながらも、長い廊下を歩きながら部屋で寝ているであろう焦凍に呼びかけた。
ずっと前に遊びに来た時と変わってなければここが焦凍の部屋だけど…。
合ってますように、と襖の前に立ち「焦凍？」と呼びかけると「Aか…。」と返ってきたので安心する。
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作者名：薫 | 作成日時：2020年8月12日 1時
