検索窓
今日:2 hit、昨日:125 hit、合計:1,252,100 hit

たらたら42 ページ43

「す、すとーーーーっぷ!!」

突如として目の前に割り込んできた人物を見て、万次郎は思わず目を見張る。



「……A、なのか?」



埃っぽく、少しやつれ気味だが、相変らずその可憐さと美しさを欠片も損なわない、それは紛れもなくAだった。


「それ以上やったら、一虎が死んじゃうから。万次郎に人殺しになってほしくないんだ、だからお願い、もうやめて、ね?」


ビキリと、額が音を立てる音が聞こえた気がした。


「ア?オレは殺すつもりでやってんだよ、お前も死にたくなかったらさっさとどけ」
ゾッとするほどドスの利いたが口から洩れる。



けれども、Aはその場をどくことはおろか、なお一層その表情を険しくさせる。
「万次郎がどんなに辛い思いをしたのか、私には分からないし、分かる なんて軽々しくも言えない。…でも、どんな理由があっても、人を殺すのはだめだ、万次郎」


今だってAは、逃げ出したくなるほどの恐怖に襲われているはずだ。実際、バッと横に広げられた両腕は、小刻みに震えている。




そんな感情を精一杯閉じ込めて、それでも一虎を庇う姿はさながら、傷付いた我が子を身を挺して守る、母親のようにも見えて。



どす黒い憎悪が沸々と湧き上がる。―――何故、どうしてAは、こんなやつを。



「オマエは、Aは…ソイツの肩を持つのか?…ソイツの、オレの兄貴を殺した奴の、味方をすんのかよ!!?」


怒り任せの感情的な声。目の前のAが、刺されたような顔をする。


「――どっちの味方とか、そういう話をしてるんじゃない!私は、ただ…」

「どけよ、A」


そこに来て声を挟んだのは、今まで黙っていた一虎。好戦的な笑みを、万次郎に向ける。そのまま立ち上がろうとして、



「いい加減にしなさい、一虎!!」

「……ぇ」

両手で顔をグワッと掴まれて、思わず困惑したような声が漏れる一虎。

「そもそもアンタが事の発端なんでしょ!?アンタ一体、どれだけ他人に迷惑かけたら気が済む―――」




「―――一虎」




何の感情も籠らない、平坦な声だった。額同士がくっつかんばかりの勢いで怒鳴りつけるAと、その雰囲気にのまれている一虎の2人が、同時にこちらを向いた。

たらたら43→←たらたら41



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (798 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
2483人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

キャラメルシュガー(プロフ) - まって..wwこのお話面白すぎて夜中なのに爆笑してしまったwww作者さん神‼️ (2022年8月18日 0時) (レス) @page18 id: 9b02bb5cbf (このIDを非表示/違反報告)
雨降り星(プロフ) - 全部千冬が引き継ぎます!! (2021年9月3日 10時) (レス) id: c629cc7e2d (このIDを非表示/違反報告)
なのは(プロフ) - あとなんか知らんけどバジリスクが4ぬとこめちゃ冷静でした丸 思い言え無くて残念だったねバジリスク…君の無念はきっと千冬が果たしてくれるよ多分! (2021年9月3日 9時) (レス) id: 4035e5a938 (このIDを非表示/違反報告)
雨降り星(プロフ) - なのはさん» なんか壮大なストーリーが始まる予感…っ!! (2021年9月3日 9時) (レス) id: c629cc7e2d (このIDを非表示/違反報告)
なのは(プロフ) - 雨降り星さん» そう…これが…黒い衝動の始まりだった…(((おやめなさい (2021年9月3日 9時) (レス) id: 4035e5a938 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:雨降り星 | 作成日時:2021年8月21日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。