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訳の分からない感情 後編 ページ3

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「自分の限界位、把握してるだろ。倒れても馬鹿らしいぞ」
「仕方ないでしょ。だって、あいつ私より身長高いし、ポニーテールだし、小馬鹿にした笑いがうざいし。……ムカつくし、負けたくない」
 ポニーテールで小馬鹿にした笑い。連想したのは、ある同級生の姿。
「なるほど」
 そのバスケ部の女とやらを、ライバルの室戸と重ねてしまったようだ。相変わらず、負けず嫌いな奴だ。
 不意に、理苑がしゃがみこんだ。ゲホゲホと激しく咳き込む理苑に水筒を差し出す。
「理苑っ、大丈夫か。水飲むか?」
「…………む、り。吐く……」
 言いながら、理苑が顔を上げた。苦しげに歪められた顔。理苑の青い瞳からは、涙がこぼれている。
「――っ!」
 どんなに苦しくても、どんなに悔しくても、人前では絶対に涙を流さない理苑であるが、身体的な限界には逆らえなかったようだ。地面に落ち、暗い染みを作る透明な液体に、一哉は胸の奥が熱くなるのを感じた。
(うっわ、なんだこれっ、おかしいだろ!)
 幼馴染みが苦しんでいるのを見て抱くべきではない感情に、一哉は戸惑った。それを振り払うように頭をふって、理苑の背をさすってやりながら言う。
「ほら、落ち着け。とりあえず、テント行こうぜ? 日陰で休んだほうがいいだろ」
 涙を乱暴にぬぐった理苑が頷く。いつもならば「馬鹿にしないで」と言われる行動だが、声を出すのも億劫なようだ、一哉の肩を借りて立ち上がる。先ほど訴えた通り吐き気がするのか、片手を口許にあてたままゆっくりとテントに向かう。普段は全く弱みを見せない理苑が、思いがけず自分に体をあずけているということに、何とも言い難い高揚を感じた。
 ……嬉しい、なんて。
(つれない猫になつかれたみたいなもんだから。それだけだろ)
 そう、自分に言い聞かせた。




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#3 視線の先 前編→←#2 訳の分からない感情 前編



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ゼファー(プロフ) - Kirariさん» ありがとうございます。これからも頑張ります。 (2021年2月8日 8時) (レス) id: 758eda2cb0 (このIDを非表示/違反報告)
Kirari - すごいおもしろかったです!内容もすごくおもしろいし、キャラも、みんな個性あっておもしろかったです!これからもがんばってください! (2021年2月7日 21時) (レス) id: 659499b88d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゼファー | 作成日時:2021年1月15日 11時

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