こぼれ落ちる水 part2 ページ18
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「シよっかぁ、ここで」
「や、やだッ!」
真っ青になってユウはアイリを振りほどこうとする。自分でもわかるくらい疲れきっているし、そもそも抵抗しても意味などない。必死に身体を捻るユウの両手首を捻り上げ、アイリは楽しそうな目で彼を見た。
目の前には、意識こそはっきりしていないがエイスとゼフィラがいるのだ。先程までの反応を見られてしまっているのに、この上さらに醜態を晒せと言うのか、彼は。
痛みを堪えながら必死に首を振ると、アイリは「しょうがないなぁ」と子供をあやす様に言った。
「確かにぃ、そういうことしちゃうと、なんだっけ。ナントカって罪で捕まっちゃうもんねぇ」
別に捕まろうともアイリにはなんとでも出来るのだろうが、処理がめんどくさいしぃと呟くアイリの言葉にほっとしたつかの間であった。
「一回見えなくなろうか、翼は出せるよねぇ?」
「ゃ、だ、アイリ……ッ!」
「だいじょぉぶ、ワタシもちゃんと消えるしぃ。見えなくなったら、翼はしまっていいからー」
そういうことではない。むしろ翼を出したままの方がマシである。
それを見透かしたかのようにアイリは笑った。
「キミの可愛いところ、見せつけるのに邪魔だろ?」
また冷たくなるその声色に、ユウはがたがたと震えだす。嫌だ。そんなのは絶対に嫌だ。アイリに逆らうことは酷く恐ろしい。しかし恥ずかしい姿を仲間であり、ライバルの彼らに見られる事には凄まじい抵抗がある。
「ひ、ッ……!」
引き攣った声がユウの喉から漏れる。
再び全身が、何かに這い回られているかのように恐ろしい感覚を覚えた。
「ァ、イリ、やめ……ッ」
「ねぇ、わかるでしょー?」
優しく、子供に言い聞かせるようにアイリがそう尋ねると、涙を流しながらこくこくとユウは頷いた。
与えられる感覚に、神経が焼き切れそうだった。アイリの言う通りに翼を顕現し、人間たちから見えなくなってから再度しまう。
そして自分を抱えていたアイリが腰に手をかけたその背中に壁に叩きつけられ、ダウンしていたゼフィラがナイフを投げた。
ナイフは背中に手を回したアイリに易々と止められた。
「何、まだ抵抗するの」
苛立たしげに、アイリは指で
「ッッ、やめろ!!」
「ハハッ、キミみたいな子なら、自分より仲間が傷付く方が
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作者名:ゼファー | 作成日時:2021年1月14日 13時