呪術師、潜入するらしい｡ 上 【ブルーロック】【呪術廻戦】

6. ページ6

.


足早に歩く担任の後ろにつき、大きなリュックを背負ったAは歩き出す｡家を出てからは慣れない電車で出発したので大変だったものだ。
リュックには大量の教科書や筆記用具が入っている｡これも五条が手配していたらしいが、何故ここまで準備を進めていたのに任務を伝えるのが遅れたのだろう｡
思い出せばまた五条をぶん殴りたい気持ちが戻ってくるが、今はそんなことを思っている場合ではなかったと担任の後ろについて行く｡

今は教室に向かっている途中である｡Aはこの後に待つ自己紹介を少々不安に思いつつ歩く｡そこで出てくるのが「でもまあなんとかなる」という魔法の言葉である｡大体のことはこれで完結するため非常に使い勝手が良い｡

「よし、着いたぞ｡ここがAのクラスだ｡」

そう言われて着いたのはよく漫画で見るような教室と似た教室だ｡
Aはやっぱりみんなこんな感じの教室なんだと感動する｡担任は「転校生って呼ばれてから入ってくるイメージあるから俺に呼ばれたら入ってこいよ〜｡」とおちゃらけた様子で言うと、教室の中へ入っていった｡

そこで教室内のノリが気になったAはどうせヒマだしと耳を澄ませ、会話を聞き取ることにした｡

「今日は大事な連絡あるからちゃんと聞けよ〜！」

「え、なになに！？やっぱ転校生来るって噂ほんとなの！？」

「うおおマジかよ！」

「女の子って噂だったよ！」

担任が言った瞬間、生徒たちが騒ぎ始める｡何故知っているんだろうと疑問に思ったが、知らない生徒が職員室にいたら噂は広がるかと一人納得した｡

「よし、入ってこいA｡」

噂広まるの早いな、なんてどうでもいいことを考えていれば己の名字を呼ぶ声が聞こえた｡
はっとして壁に寄りかかっていた体を起こし、扉に手をかける｡

「(よし｡)」

Aは息を吐くと、引き戸をカラカラと開けて教室内へと一歩踏み出した｡
クラスメイトの視線が一斉にAに向く｡

Aはてくてくと教卓まで歩いて行き、生徒たちに向き直る｡

「･･･A A、デス｡ヨロシク｡」

そんなカタコトの言葉で始まった自己紹介｡
その時止まっていた時間が動き出したかのように1人の女子生徒が甲高い声をが上げた｡

「かっ･･･！かわいいいぃぃ！！」

頬を薔薇色に染め、手を口元に当てて言った女子生徒｡それに連動して、ザワザワと教室が騒がしくなった｡
女子生徒に同意する声やその他諸々｡

取り敢えず自己紹介は成功したようである。


.

7.→←5.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す