Rainbow Kiss〜ナナイロのキスの味〜No.4

Blueberry Kiss26 ページ26

千賀side



絵葉書の桜を見て、彼女に桜を届けてあげようと思った。


満開の桜の木は無理だけど……ね。


パリに発つ寸前に花屋さんで買った桜の小枝。


十何時間のフライトに耐えられるか心配だったけど、到着してすぐに新聞紙にくるまれた桜を覗くと、まだまだ生き生きしていて一安心。


……きっと、喜んでくれる。


俺と同じ気持ちだと確信して、ここまでやって来たんだから、喜んでくれなきゃ困るし。


はやる気持ちを抑えきれずに、まだ早い時間帯だというのにAの家に着いたけど、不在だったからスタンバイ。


いつ戻るかも分からないけど、窓の外を眺めていた。


こんなに美しい街並みだから、見ていて全然飽きない。


どこからか美味しそうな匂いも漂ってくる……。


そういえば、機内食から何も食ってねーな、なんて考えていた時、遠くから見覚えのある顔が全力で駆けてきた。


走っているせいか、頬が赤くなって……。


……やっぱり、可愛い。


ずいぶんと会っていなかったせいで、姿を見ただけで胸がキュン、と鳴いた。


なんだろうこれ……


……何か、あの時みたい。


まるで、初めて想いが通じ合った卒業式の日のように思えた。




千「あ、あぶねっ！桜、桜……」




少し可哀想だけど、小さく揺らして花びらを落とした。


はらはらと舞う桜は、ちょうどのタイミングで彼女目掛けて落ちていく。


キョロキョロとするA。


ふふっ……面白い。


ようやく気が付いたのか、顔を上げた。



そこで初めて交わる視線。


ドキドキしたけど、いつもの口調で言った。




千「気づくの、おっせーよ！」

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