Rainbow Kiss〜ナナイロのキスの味〜No.4

Blueberry Kiss24 ページ24

Aside



誕生日は結局一人で過ごした。


大切な日には、健永以外の人と過ごしたくないっていうのがあったから。


当日に断りの電話を入れると桜井さんは、仕方ないな、なんて言いながら許してくれた。


だけど健永は何故か怒っているようで、電話は全く繋がらなかった。


……もう会えないのに。


会えない理由がやってきたのは、唐突だった。


会社からの指示でフランスのパリまで行ってくれなんて簡単に言われて。


パスポートは簡単に取れるからすぐに準備しろって……


こっちはそんなこと重要じゃない。


大切な人が……健永が居るのに。


離れたくないのに。


けれど会社には私情は関係なくて、結局は従わなければいけなかった。


なかなか繋がらない電話は最後まで繋がらなくて、フランスへ発つ前に桜井さんに伝言を頼んだ。


もしかしたら……なんて期待して、搭乗時間ぎりぎりまで粘ったんだけど。


でも、来なかった。


見捨てられた……そんな気分。


それから一ヶ月。


いまだに諦めきれない私は、一枚の葉書を彼に送った。


日本から持って来た、満開の桜の絵葉書。


伝えたいことはたくさんあったけど、満開の桜が私の想いを伝えてくれていたから、近況報告だけ。




……パンがすごく美味しくて食べすぎちゃう。




……部屋からセーヌ川が見えるんだよ。




……エッフェル塔って案外ちっちゃいの。




伝わったかな？って気になるけど、きっと健永には伝わったって信じてる。


じゃなきゃこっちで頑張れないし。


今日も早起きして、近くのパン屋さんでクロワッサンとカフェオレを買ってセーヌ川沿いのベンチで食べる。


なんて幸せなんだう。


と、思い込ませるけど……




A「健永、会いたいよ……」




呟いても会えるワケないのに、日に何度も口走ってしまって。


口癖みたいになっちゃってる。




A「さて、帰るか……」




桟橋をゆっくり渡っているとパリの美しい景観が目に飛び込んできて、いつもここで足を止めてしまう。


綺麗な街並みに溶け込んでいくのには、まだ時間がかかりそう……。

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