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「いえ、違いますってば!わ、私は谷地仁花って言うんです」
「………………」
 夕焼けを背に立っているせいで、こんな近くにいるのに男の表情は逆光により見えなかった。ただ、納得していないことは空気でわかる。
「そりゃあちょっとアリスと響きは似ていますが、私は生粋の日本人だし、英語だって少し苦手だし、ええとつまり……私はアリスじゃないんです!」
「………………」
 首を傾げたまま仁花を見つめていた男は、ようやく国利と頷いた。よかった。これで誤解が解けた。
「じゃあアリス、白ウサギを追いかけよう」
「!!」
 仁花は言葉を失って男を見上げた。この人、まるで話を聞いてない。一生懸命説明をした自分の努力の報われなさに開いた口が塞がらない。
 男は悪ぶれた様子もなく、仁花を見下ろしていた。見上げた先には、相変わらずにんまりと笑う口が見える。それより上の部分には暗い暗い闇しかなかった。
 吸い込まれそうな闇に見入っていると、男が仁花に向かって手を差し出した。その瞬間、仁花はそれを払い落としていた。漕ぎ見よい音が室内に響く。
 しまった、やりすぎた。そう思っても、もう遅い。男は払い落とされた手をじっと見つめている。怒らせてしまったかもしれない。
「ごごごごごめんなさい、でもあの、もう帰らないと遅くなるし………!」
 後日また改めて、と逃げるように背をドアへと押し付けると、再び抑揚のない声が降ってきた。
「……消えろってことかい?」
 正直に言えば今すぐにでも消えてほしい。
でも、さすがにそれを口にするのは憚られ、何も答えられずにいると、男も黙ったまま仁花を見下ろしてる。刺されたり、しないよね?
表情が分からないから想像だけでまくし立ててしまう。今日の夕刊の一面に自分の記事が載るところまで想像が進んだとき、ずきっと脇腹が傷んだ。一瞬、本当に刺されたのかと思ってようやく口を開いた。
「僕らのアリス、君がそれを望むなら」
 なぜか満足げな芝居がかった口調目。を開けて絶句した。
______消えてる。
床まで届く灰色のローブが膝辺りまで消えていた。あまりの事に何も言えず、その様子を仁花は確かに消えて欲しいといった。いったけれど、誰がこの様な消え方を予測するだろう。
 ドアにつかまり、体を支えながら立ち上がり、今の今まで男が立って居た場所を見つめる。どんなに目を凝らして見ても男がいたと言う痕跡は残って居なかった。

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ヨモギ(プロフ) - ☆羽咲☆さん、読んでくれてありがとうございます。之からも頑張ります。 (2017年11月19日 8時) (レス) id: bacf7e1cb1 (このIDを非表示/違反報告)
☆羽咲☆ - 物語、面白いですね!続き待ってます!(*´ω`*) (2017年11月18日 21時) (レス) id: 33cc24d0db (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2017年11月18日 13時

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