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だがそれにまた同じ返事が繰り返される。
「ユキノは、いない」
にやにやと笑う口。足に力を入れなければ、逃げ出してしまうところだった。それほど、異様な雰囲気があった。
「……あ、あの…じゃあ、私も帰りますね…」
無視する訳にもいかず、あいまいな愛想笑いを浮かべて机から離れる。
男に背を向けるのはかなり勇気が必要だが、ずっと睨めっこをしている訳にもいかない。仁花は努めてゆっくちとした歩調で自習室のドアまで向かった。早くここから出て先生に知らせないと。変な人がいますって。
引き戸に手を掛けたところで、仁花は後ろを振り返った。そして後悔する。怖いものを見た際というのは後悔しか生まれない。
「キャアアッ!?」
目と鼻の先に男は立ってた。
まるで仁花にぴったりと寄り添うように。
勢いよく飛び退いたせいで、背中がドアにぶつかり大きな物音を立てた。心臓が痛い位にバクバクと脈打ってる。
近づいてくる足音なんてしなかった。いくら緊張していたとはいえ、これだけ近くに来られては気が付くはずだ。
膝が震え、仁花はずるずると座り込んだ。男はただにんまりと笑い、仁花を見下ろしている。
「な、何か御用ですか!? あなた誰……。」
「僕はチェシャ猫だよ」
「チェ、チェシャ猫さん?…外国の方？」
「さあ、アリス。白ウサギを追いかけよう。」
「は……ウ、ウサギ？」
言葉は通じるようだったけど、話は通じない。どうしていきなりウサギが出てくるのかと、仁花は眉間を寄せた。
「ウサギを……探しているんですか?」
仁花は背をドアに押し付けどうにか距離を取ろうとしたが、男はそれに気づいているのかいないのか、近い距離を保ったままこくびを傾げるだけで一向に離れてはくれない。
「僕は探していないよ。アリスが追いかけるんだよ。」
やはり、会話が噛み合ってない。仁花は自分の方が可笑しいのかと不安になりながらも、どうにか会話を成立させようと次の質問をした。
「アリスって?」
「きみだよ」
「ち、違います!私は…アリスじゃないです。」
激しく首を横に振ってから、ああ、そうかと思い至る。
「なんだ、人違いですね。」
それなら会話が通じないわけも、この近過ぎる距離も……何とか妙に納得できる。仁花がほっと息をつくと、
「違わないよ。僕らはアリスを間違えたりしないよ」
何をおかしなことを、といった口調で男が反論する。
「でもアリスじゃないんです」
「アリスだよ」
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ヨモギ(プロフ) - ☆羽咲☆さん、読んでくれてありがとうございます。之からも頑張ります。 (2017年11月19日 8時) (
レス) id: bacf7e1cb1 (このIDを非表示/違反報告)
☆羽咲☆ - 物語、面白いですね！続き待ってます！(*´ω｀*) (2017年11月18日 21時) (レス) id: 33cc24d0db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：妄 | 作成日時：2017年11月18日 13時
