褪せない今日より見えない明日で【高尾和成】2

Good Old Days 055 ページ22

　そのまま和成は私の手を引いて建物の中に入った。いや待ってこのおどろおどろしいフォントの看板と見るからに安っぽい黒色の外壁塗装は。


「お化け屋敷ぢゃん……」


　思わずそう呟くと、和成が目を見張ってから、私を見つめてニヤニヤしだした。


「あれ、Aってこういう系苦手だっけ〜？ オレ、いいとこ見せちゃおっかな〜」



　いやそういうわけではないの、と言い訳を続けようとすると、係員のお姉さんが
「そちらのカップルさん、中へどうぞ〜。くれぐれも中ではイチャついたりしないようにしてくださいね」
と誘導してくれたので私の話はそこで遮られた。


「ちなみになんでイチャついちゃダメなんですか？」


「ここのお化けたちはね、生前痴情のもつれが原因で死して尚この世を彷徨っているのです。


ですから……私は別に怖がってるふりして彼ピッピに抱きついちゃおうとかいう不届者にラリアットをかましたいとは思いませんよ。


下心丸見えでお化け屋敷に入って来てる男にジャーマンスープレックスキメて半泣きにさせて女に幻滅させてやろうなんて考えたこと1度たりともありません。


ですがここにいる幽霊はそういうリア充に対して大層な恨みを持っていますから。せいぜい気をつけてください。では楽しんでいってらっしゃーい」


　そう言って私達を送り出すと彼女はイヤモニで「今入った2人組、イチャつくようなら特別プラン『従業員の完全なる私怨によるリア充大爆発プラン』でお願い」。


「正直、幽霊より人間の方が怖そうだね」


「オレはおもしれーと思うけどな」





　

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