Good Old Days 037 ページ3
「さっむー……」
マフラーに顔を埋めながら、和成が言った。彼が言葉を発するたびに、その口から白息が漏れ出る。
今日は、いつもと異なる点がいくつもある朝だ。
1つ、昨晩の降雪により、道端や軽トラに薄く雪が積もっていること。とはいっても私達の歩く道の真ん中には除雪剤が撒かれているため、普通に歩く分にはそこまで影響はない。
2つ、今日はチャリアカーがない。雪で滑ったら危ないから。たまには、こうやってまったり歩いて登校するのも良い。
そして、最後の相違点。登校の時間帯がいつもより遅い。今日は3年の引退式だからだ、朝練はない。
「A、遅いのだよ。置いて行くぞ」
滑らないように気を付けながらモタモタしている私の前を歩く真太郎が、振り返りながら言った。
置いて行く、なんて言いながらきちんと立ち止まって待ってくれる真太郎の優しさに、胸がじんわりと温かくなった。
ととっ、と小走りで彼らに駆け寄る。
「つーか、このままじゃカンペキ遅刻だぜ? どーするよ。走ろうにも、オレらとAとじゃ、脚力ちげーし」
「ちょっと和成、私のこと運痴みたいに言わないでよね」
「本当のことなのだよ」
むーん、心外だ。そりゃあ、2人との運動能力の差は歴然たるものだが、私にも運動部マネージャーとしての自負がある。部員の分のクソ重いドリンク運んでるこの私がか弱いわけないでしょ。
わーわー反論すると、和成がいきなり私を抱き上げた。……いや、和成がいきなりで韻踏んでるわけじゃない、よ?
真太郎は口をあんぐりと開けた。私もびっくり。突然抱っこするとか、裁判にかけられてもおかしくないよ。次は法廷で会おうか。
「た、たたた高尾、何をしている?!」
女性を抱きかかえるなど言語道断なのだよ――真太郎は、彼らしい言葉で和成を諫めようとする。
「や、オレらが抱えてった方が速くね? チャリアカーの代わりに、Aをどっちがおぶるかジャンケンで決めよーぜ真ちゃん」
「ちょっと待ってちょっと待ってお兄さん。私の意見も聞こうか」
勝手に話を進めていく和成に、たまらず叫んで割って入る。が、牽制も虚しく真太郎は乗り気らしい。
「面白い、高尾。もっとも、オレが負けるなど有り得ない。Aを担ぐのはこのオレだがな」
「ねえー2人とも私の話聞いてよ。ていうか、信号ごとにジャンケンしてたら引退式に間に合わないよ」
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ふなふね(プロフ) - コメントありがとうございます……! すごく力になります! 作者はこれから多忙になることが予想されるのでそれまでにガンガン更新していきたいと思うので見捨てずこれからもこの作品をよろしくお願いします! (2023年3月19日 8時) (レス) id: 7172b187f5 (このIDを非表示/違反報告)
和‐カズ‐(プロフ) - ふなふねさんの、この作品めっちゃ好きです!これからも更新頑張ってください! (2023年3月19日 7時) (レス) @page19 id: 5655eee53b (このIDを非表示/違反報告)
みかん - やっぱり作り直すのやめて、パスをもう自分でもメモしないとわからないやつにかえました!お互いに頑張りましょう! (2022年6月27日 16時) (レス) id: 1980a86d42 (このIDを非表示/違反報告)
ふなふね(プロフ) - みかんさんヘ―ありがとうございます。お互い頑張りましょう。水無月歌恋さんへ―目を通してくださりありがとうございます。励みになります。 (2022年6月26日 20時) (レス) id: 350748c4de (このIDを非表示/違反報告)
みかん - はい!私が占いツクールで小説書こうと思ったのふなふねさんのおかげですから!後、私の駄作を読んでくださってるんですか!ありがとうございます!荒らされた件でもう一度作り直しますのでまっていてください! (2022年6月26日 15時) (レス) id: 1980a86d42 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ふなふね | 作成日時:2022年4月21日 21時