【オリジナル】野獣と剣士と独りの僕 (ページ6)

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4話尊敬と羨望ページ6

僕らの住んでいる北の村は、王国を中心とした四方の中でも治安は良い方だ。

騎士団の内でほとんどの人が此処...北の村の出身であり、上の位に就いている。

だからか、他の村に比べれば“こういったこと”はなかなか起こらない...筈だった。

＿＿＿うぉらぁぁぁあ！！

「甘い...後ろだ、よっ！」

＿＿＿はぁぁぁぁあ！！

「...遅い」

頼りなく地べたに座り込んでいる僕の真上を、敵の刃が一閃切り抜けていく。

僕に当たらなかったのは、コウさんがギリギリのところで敵刃を切り上げてくれたからだ。

今、僕たちのことを襲ってきているのは野党...それも結構大きな団体であった。

村の広場に設置されている掲示板には、今尚捕まっていない数々の凶悪犯の顔写真や情報が事細かに記されている。

コウさんとシュウさんが所属している王国騎士団は、こういった人達を捕まえ、そして検挙するような仕事をしているのだ。

よって、剣を持った二人は＿＿＿

「はぁ！」

「邪魔だ...！」

『...やっぱり、強いなぁ』

＿＿＿強いし、何より格好良い

王国騎士団に入団していない僕も一応は剣術を教わっている...だが、ここまで力の差を見せ付けられれば自信を無くしてしまう。

しかし、それ以上に抱く感情は格好良いなのだから僕も大概なのだと思う。

「...っ、A！」

『...っ！？』

「...チッ、てめぇら！！」

コウさんの呼び掛けに、僕は自身のすぐ真後ろに迫っていた敵刃を慌てて避ける。

避け方が悪かったらしく、左腕に少しだけ擦ってしまったらしい...僅かな痛みが、僕の脳内に伝わっていった。

その一瞬、その場から動けなくなった僕の身体をコウさんが抱き留めて敵刃を交わす。

シュウさんは僕の腕の傷を見るなり、目の色を変えて十数人はいるであろう敵の束へと斬り掛かっていった。

「あ～あ、シュウがキレてしまったね。

巻き込まれないよう、俺たちは避難してよう」

鬼のような形相で腰元から取り出した短刀...ダガーを振り回すシュウさんを遠目に、僕の腕に持参していた包帯を巻き付けていくコウさん。

彼は地面に置いていたレイピアを帯刀し直し、いつもの笑顔を浮かべて僕の手を引いた。

...歩く僕らの後方から聴こえてくる野党たちの絶叫が、シュウさんの恐ろしさを物語っているような気がした。

「普段怒らない人って、怒ったとき凄く怖いよね...俺の妹も、キレたときは手に負えなくて」

『...ブーメラン』