五十六話 ページ11
私は差し出されたコップにゆっくりと口をつける。
温かくて、いい香りだ。
思わず笑みが溢れる。
珍しい飲み物も嬉しいけど、リヴァイさんが私のために淹れてくれたということが嬉しかった。
私がにやにやしていると、リヴァイさんが足を組み替えて言った。
「訓練の手応えはどうだ」
私はすぐに表情を引き締めて今日の訓練を振り返る。
「ええと、見たことのない模型でとにかく驚きました。調査兵団ではいつもあんな装置を訓練に使っていたんですね」
私がそう発言すると、リヴァイさんは眉間にシワを寄せて言った。
「……あれはハンジが考案した新装置だ。運用は今回が初だった」
私はその事実を知らされて驚き、そして少し落ち込む。
……私の最初の討伐はまぐれだったのか。
皆さんが新装置を警戒している間に……というのはなんだか卑怯だったように思えたのだ。
私が一瞬黙ったのを見て、リヴァイさんは呆れたようにため息を吐いた。
「お前のことはあいつらも評価している。例え見たこともねえ巨人が現れたとしても、俺たちは戦わなきゃならねえ」
"落ち込むな"ってことかな。
嬉しくなって顔を上げると、リヴァイさんがこちらに手を伸ばしていた。
＿＿お父さんが叩くから、誰かの手が近くに来るのはずっと怖いことだった。
でも、リヴァイさんは違う。
「だが、ただ命を捨てれば良いってもんでもねえ。気をつけることだ」
ぽふ、とリヴァイさんの手が頭の上に乗せられる。
リヴァイさんの手は、相変わらず大きくて、ごつごつしている。
「リヴァイさんに撫でてもらうの、好きです」
「……ならいい」
リヴァイさんの手は、努力している人の手だ。
優しくて、安心する。
それでも、こんな大きな手でも、何かを掴めなかったり、誰かを守れなかったりすることはあるんだろう。
だから、少しの間でも側にいて手伝えたらいいな、と思う。
私が兵士になるのを決心したのは、きっとあの父の血が私に流れているという事実を拭いたかったからだ。
リヴァイさんの側なら、そんな暗い理由じゃなくて本当に人類の為にこの心臓を捧げられる気がする。
「リヴァイさんのこと、好きです」
気づけばそんな言葉が口を衝いていて、ぴたりと手の動きを止めたリヴァイさんと視線がぶつかる。
酷く驚いた顔をしたリヴァイさんを見て、私は口に出してしまったことを後悔した。
ゆっくり時間が流れているような部屋の空気が冷めていくような気がした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 147人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「アニメ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ミカサ(プロフ) - ぐふぉっ(リヴァイの尊さにやられました) (2021年3月18日 15時) (
レス) id: 2cebe15e55 (このIDを非表示/違反報告)
はるこん(プロフ) - 麗紅花さん» お返事遅くなってしまいすみません。楽しんでいただけたならよかったです！そろそろ続きも書こうと思っていますので良ければぜひお読みください〜 (2021年2月28日 18時) (レス) id: af5768fbd2 (このIDを非表示/違反報告)
麗紅花(プロフ) - 作品を最初から最後まで読ませてもらいました！とても可愛くて純粋な恋愛で萌えました。リヴァイの性格も口調も上手く捉えていてスゴッ！！！と思いました。続きできたら是非とも読みに来ます！小説を頑張ってください！応援しています。 (2021年1月1日 15時) (レス) id: fa2fa0f152 (このIDを非表示/違反報告)
はるこん(プロフ) - 睡蓮さん» 最後の方は結構駆け足でしたよね笑 来年度に時間ができたら書きたそうかなと思っていますー読んでくださってありがとうございます！ (2020年5月3日 14時) (レス) id: 99f376c927 (このIDを非表示/違反報告)
睡蓮(プロフ) - こんにちは！作品一気に読ませていただきました！すごく面白かったです！リヴァイ兵長はきっとキャラや口調的に難しいと思うんですが、それを感じさせないぐらいすごく読みやすかったです！もっと先の物語も読みたいなって欲が出てしまうぐらいでした！笑 (2020年4月30日 1時) (レス) id: 56d089aaee (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：はるこん | 作成日時：2020年3月19日 15時
