四十七話 ページ2
消毒薬、包帯、鎮痛剤、注射器。
エーテル、メス、鉗子、針、糸。
「……よし」
旧調査兵団本部に着いた私は、とりあえず医療品の確認をしてリストにまとめた。
報告書をひとりで仕上げるのはなかなか緊張するものだ。これがエルヴィン団長のもとにそのまま届けられる。
ハンジさんは殺された巨人についての報告書の作成で忙しいみたいだった。
私はふー、と息を長く吐き出して立ち上がった。
いざ、団長室へ。
ハンジさんが"きちんと"掃除したという部屋はやはりホコリが残っていて、少しむせそうになりながら廊下に出た。
__
「失礼します、A・エヴァンスです」
「ああ、入っていい」
ノックをすると、エルヴィン団長の重厚感のある低い声が返ってくる。
私は手の平に汗を感じながらドアノブをひねった。
「衛生用品に関する報告書を持ってまいりました」
団長室に入ると、ハンジさんとリヴァイさんもソファに座っていた。
リヴァイさんは私のことを見ずに、別の方向を見ながら脚を組んでいる。
何か大切なことを話していた最中だったら申し訳ないな。
きっとハンジさんの方の報告書のほうが圧倒的に重要度が高いだろう。
そう思い、私は手短に用件を伝える。
「鎮痛剤が少ないですね。
必要分はこちらにまとめましたのでご参照ください」
「ありがとう。悪いな、突然呼びつけて」
エルヴィン団長の謝罪に私は恐縮して首を横に振った。
恐れ多いことこの上ない。
衛生うんぬんという話は形式的なことで、実際私はいるだけであまり仕事がないのである。
「いやーA、討伐数7だって?」
急いで退出しようと思っていたが、ハンジさんに声をかけられる。
「新兵としてはなかなかない戦績だねえ。何かの手違いかと思ったくらいだよ」
ハンジさんがそう言ったとき、私はハンジさんが上官だということも忘れてすぐにハンジさんの目を睨むようにして見つめた。
「……最初の二体はミーナたちが殺されたときで、次の一体はエレンが身代わりに食われたときの巨人です」
みんなの最期を思い出すと、息が苦しくなる。
動かなくなった皆の虚ろな瞳が、いつまでも頭から離れないのだ。
エレンだって。
いくらまた生えて来ると言っても、食われたときの激痛は消えない。
私は言葉を止められなかった。
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ミカサ(プロフ) - ぐふぉっ(リヴァイの尊さにやられました) (2021年3月18日 15時) (レス) id: 2cebe15e55 (このIDを非表示/違反報告)
はるこん(プロフ) - 麗紅花さん» お返事遅くなってしまいすみません。楽しんでいただけたならよかったです!そろそろ続きも書こうと思っていますので良ければぜひお読みください〜 (2021年2月28日 18時) (レス) id: af5768fbd2 (このIDを非表示/違反報告)
麗紅花(プロフ) - 作品を最初から最後まで読ませてもらいました!とても可愛くて純粋な恋愛で萌えました。リヴァイの性格も口調も上手く捉えていてスゴッ!!!と思いました。続きできたら是非とも読みに来ます!小説を頑張ってください!応援しています。 (2021年1月1日 15時) (レス) id: fa2fa0f152 (このIDを非表示/違反報告)
はるこん(プロフ) - 睡蓮さん» 最後の方は結構駆け足でしたよね笑 来年度に時間ができたら書きたそうかなと思っていますー読んでくださってありがとうございます! (2020年5月3日 14時) (レス) id: 99f376c927 (このIDを非表示/違反報告)
睡蓮(プロフ) - こんにちは!作品一気に読ませていただきました!すごく面白かったです!リヴァイ兵長はきっとキャラや口調的に難しいと思うんですが、それを感じさせないぐらいすごく読みやすかったです!もっと先の物語も読みたいなって欲が出てしまうぐらいでした!笑 (2020年4月30日 1時) (レス) id: 56d089aaee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はるこん | 作成日時:2020年3月19日 15時