五十八話 ページ13
「リヴァイ、さ……」
背中に扉が触れ、そのままぐっとドアに押し付けられる。
キスなんてしたことがない。
口を塞がれて息ができなくなり、私は混乱した。
迷った末、遠慮しながら右手でリヴァイさんの服を軽く握るとリヴァイさんが唇を離す。
するとそのまま背中に腕が回ってきて、お互いの顔の距離がすっと詰められた。
不純とは程遠い、優しい腕の中で私は呆然と立ち尽くした。
このキスとハグは、どういう意味で受け取ればいいんだろう。
そう思うものの、至近距離で注がれるリヴァイさんの鋭い眼差しに私は何も喋れなかった。
「泣くな」
「え……あっ」
私の前髪をすっと避けて、涙の伝う頬にリヴァイさんが口づけをして吸い取った。
何が起きているか分からないまま、私は頬に触れる唇の感触を受け入れる。
リヴァイさん、潔癖症なのに……
緊張と驚きで涙が止まると、リヴァイさんの眼光がもう一度私を射すくめる。
リヴァイさんはどこか苦しそうに眉を寄せながら、ぼふ、と勢いよくもう一度抱きしめた。
「……俺は、お前に賭けたいと思う反面、外になんか行かせたくねえとも思う。壁外は、一緒にいた奴が一瞬で首ひとつになるような場所だ」
リヴァイさんの手がすっと私の項を撫でる。
なんとなく、頭を巨人に噛み千切られる想像をしてしまって私はリヴァイさんの胸に頬を寄せた。
リヴァイさんの低い声が言葉を続ける。
「だが、ウォールローゼが突破されれば、人類全員がその状況を味わうことになる。お前は……戦うんだな?」
……リヴァイさんの言う通りだ。
壁外なんて行かず、大切な人とずっと一緒にいるなんて不可能だ。
突然、大きな陰が私達の幸せを真っ黒に覆う日がいつか来るのだ。
私は、もう誰もそんな思いをしなくていいように剣を振るいたい。
壁外で死ぬかもしれなくても、死ぬぎりぎりまで抗いたいんだ。
「……はい」
この残酷な世界に。
リヴァイさんが私の頭に手を乗せた。
しょうがないやつだ、とでも思っていそうな顔をしている。
あーあ、このまま死んじゃえたら幸せだなあ。
私はそんなことを考えて目を細めた。
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ミカサ(プロフ) - ぐふぉっ(リヴァイの尊さにやられました) (2021年3月18日 15時) (レス) id: 2cebe15e55 (このIDを非表示/違反報告)
はるこん(プロフ) - 麗紅花さん» お返事遅くなってしまいすみません。楽しんでいただけたならよかったです!そろそろ続きも書こうと思っていますので良ければぜひお読みください〜 (2021年2月28日 18時) (レス) id: af5768fbd2 (このIDを非表示/違反報告)
麗紅花(プロフ) - 作品を最初から最後まで読ませてもらいました!とても可愛くて純粋な恋愛で萌えました。リヴァイの性格も口調も上手く捉えていてスゴッ!!!と思いました。続きできたら是非とも読みに来ます!小説を頑張ってください!応援しています。 (2021年1月1日 15時) (レス) id: fa2fa0f152 (このIDを非表示/違反報告)
はるこん(プロフ) - 睡蓮さん» 最後の方は結構駆け足でしたよね笑 来年度に時間ができたら書きたそうかなと思っていますー読んでくださってありがとうございます! (2020年5月3日 14時) (レス) id: 99f376c927 (このIDを非表示/違反報告)
睡蓮(プロフ) - こんにちは!作品一気に読ませていただきました!すごく面白かったです!リヴァイ兵長はきっとキャラや口調的に難しいと思うんですが、それを感じさせないぐらいすごく読みやすかったです!もっと先の物語も読みたいなって欲が出てしまうぐらいでした!笑 (2020年4月30日 1時) (レス) id: 56d089aaee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はるこん | 作成日時:2020年3月19日 15時