四十話 ページ40
間に合え……!
立体起動装置を唸らせながら必死に祈る。
エレンはこちらに気づいたようだった。
苦しそうに眉を寄せながら、私の目を見る。
片脚を失ってもなお、エレンの瞳はぎらぎらして光っていた。
待って、助けるから。
しかし、
待ってよ、待ってよ。
あと__100メートルが、こんなに遠い。
閉じていく口からエレンが腕を伸ばした。
エレン、
今は何も考えずエレンを助けないといけないのに、何故か訓練兵団でのエレンの照れ笑いと、決意が脳裏にちらついた。
心拍数がどんどん上がっていく。
こわい。
かくん、とエレンの体制が崩れていく。
巨人の歯が勢いよく噛み合わさって、何かが頬をかすめた。
腕だ。
エレンがこちらに伸ばしていた腕だ。
巨人は少し顔を上に向けてエレンを飲み下す。
アルミンが叫ぶような悲鳴を上げた。
やっと辿りついた私も隣に降り立って呆然とする。
私は、エレンを助けることができなかった。
そしてその巨人は別の班の方へ向かっていく。また叫び声が上がった。
援護に向かわなければならないのに、エレンが目の前で食われたショックで動けなくなる。
「うあぁあ、あぁ、あ、僕、のせいだ」
アルミンの泣き声のような呟きが鼓膜を揺らす。
俯く私達の足下を、そっと影が覆った。
__巨人は、仲間を失った悲しみに浸ることすら許してくれない。
また別の巨人がやってきたようだ。
「もう、やめてよ」
あまりにやるせなくて、どんな表情をすればいいか分からず、呟くように乞う。
私は無意識のように屋根を蹴って巨人の項に回り込んだ。
切り落とされる肉片。
そして息つく間もなく腕が伸びてきた。
もう一体。
横目で放心しているアルミンを見ると、今のところは狙われていないようだった。
睨んだ巨人が涙で揺れる。
大きいなぁ。
ほんとに、ほんとに大きい。
当たり前のようなことを思いながらまた切り落とした。
巨人の力はあまりにも大きくて、何だか情けないような、笑い出したいような気持ちがする。
__お父さんに壊された幸せとか、私の決意とか、全部意味なんかない。
私たち人類全員、巨人に食い殺されて死ぬんだ。
見渡すと、辺りには屋根から頭が飛び出す程大きい人類殺戮者がうようよしている。
リヴァイさん。
私は思わず不在の調査兵団のあの人の名前を心の中で呼んだ。
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はるこん(プロフ) - ??さん» そうですね、これだとウサギ跳びみたいになっちゃいますね笑 直しておきました。ご指摘本当に嬉しかったです!ありがとうございます! (2020年4月11日 22時) (レス) id: 99f376c927 (このIDを非表示/違反報告)
??(プロフ) - 実は緩く縛られていたのでしょうか?でしたらそういう表現も文に入れていただけると想像しやすいです…。すみません、どうしてもそこの表現が気になってしまいコメントにて質問させていただきました…m(_ _)m (2020年4月11日 18時) (レス) id: dc3a8c3be2 (このIDを非表示/違反報告)
??(プロフ) - ただひたすらに走って行った、という表現があるのですが夢主はどうやって手足が縛られているのに走って逃げたのですか? (2020年4月11日 18時) (レス) id: dc3a8c3be2 (このIDを非表示/違反報告)
??(プロフ) - 初めまして、コメント失礼します。十四話(過去)のページ内の表現について質問があります。ページの最初の方に夢主が馬車の中で手足を縛られている、という表現がありますがその後同ページ内で、前に乗っていた男に蹴り出され馬車の外に出て夢主は逃げた、 (2020年4月11日 18時) (レス) id: dc3a8c3be2 (このIDを非表示/違反報告)
shinon※*(プロフ) - いえいえ!更新楽しみにしてますね!無理せず頑張ってください!! (2020年3月10日 20時) (レス) id: 4f45f8ab39 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はるこん | 作成日時:2015年8月20日 19時