二十九話(過去) ページ29
「A!」
怒号ともとれる声で振り返るとそこには目を血走らせた父がいた。
「……っあ」
体がまるで動かない。全身が痺れて感覚が麻痺していく。
逃げなければならないと頭では分かっているのに出てくるのは勇気でも悲鳴でもなく冷や汗だけだった。
縋るようにリヴァイさんをみるとリヴァイさんはただ父を見据えていた。
リヴァイさんの冷静な様子を見て徐々に心が落ち着いていく。
でも恐怖はそう簡単には消えない。
父は、やっと見つけたと言うように気味の悪い薄ら笑いを浮かべてゆらゆらと近づいてきている。
自分の瞳に映っているのは父ではないと否定したくなる。
でも、受け入れなきゃ。
これが現実だ。
そう、こんなクソみたいな現実が。
真実なんだ。
変えるには勝つしかない。
戦わなければ勝てない……!
「お父さん」
Aはこつこつと石畳を鳴らして父に近づくと手を振り上げて思い切り頬を叩いた。
辺りに破裂音が響く。
あぁ、やっちゃった……!
後悔なのか罪悪感なのかは分からないが
嫌な感情が渦巻く。
__今まで逆らったことのない、
服従してきた父親に手を上げることが彼女にとってどれだけ恐ろしいことだっただろう。
これは仕返しでも攻撃でもない。
父との決別の意思表示だった。
「もう二度と近づかないで」
そう言ったあと彼女は震えていた。
こんな父親でもやはり愛していたのだろうか____
「親にそんな口をっ」
流石の彼も面食らった様子で動けないでいたがしばらくして我に返ると叫びながら殴りかかろうとした。
「そこまで」
リヴァイは流れるような動きでAとジョンの間に滑り込むと攻撃を軽くいなしてみせた。
そして鳩尾に拳をめり込ませる。
父を手早く伸してしまった。
「大丈夫……なわけねぇな」
「いえ……ありがとうございます」
少しすまなそうに頭を掻くリヴァイさんにお礼を言って父の脇にしゃがむ。
これから父は__
戻れない。
あの日には二度と。
「さよなら」
気絶している父を哀しそうに見つめて呟いて吹っ切れたように勢いよく立ち上がった。
「後は憲兵団とハンジの仕事だな」
「ッいつからそこに!?」
私は現れたハンジさん(と部下)を見て驚きを隠せないでいた。
「送ってってやる」
私は安心感から少し笑うとリヴァイさんの手を握った。
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はるこん(プロフ) - ??さん» そうですね、これだとウサギ跳びみたいになっちゃいますね笑 直しておきました。ご指摘本当に嬉しかったです!ありがとうございます! (2020年4月11日 22時) (レス) id: 99f376c927 (このIDを非表示/違反報告)
??(プロフ) - 実は緩く縛られていたのでしょうか?でしたらそういう表現も文に入れていただけると想像しやすいです…。すみません、どうしてもそこの表現が気になってしまいコメントにて質問させていただきました…m(_ _)m (2020年4月11日 18時) (レス) id: dc3a8c3be2 (このIDを非表示/違反報告)
??(プロフ) - ただひたすらに走って行った、という表現があるのですが夢主はどうやって手足が縛られているのに走って逃げたのですか? (2020年4月11日 18時) (レス) id: dc3a8c3be2 (このIDを非表示/違反報告)
??(プロフ) - 初めまして、コメント失礼します。十四話(過去)のページ内の表現について質問があります。ページの最初の方に夢主が馬車の中で手足を縛られている、という表現がありますがその後同ページ内で、前に乗っていた男に蹴り出され馬車の外に出て夢主は逃げた、 (2020年4月11日 18時) (レス) id: dc3a8c3be2 (このIDを非表示/違反報告)
shinon※*(プロフ) - いえいえ!更新楽しみにしてますね!無理せず頑張ってください!! (2020年3月10日 20時) (レス) id: 4f45f8ab39 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はるこん | 作成日時:2015年8月20日 19時