ラストダンス

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オレンジ色のライトの下でグラスがぶつかる音が響く。




気を遣ってお互いにグラスを低くする応酬のない飲み会は気楽でいい。




「で、最近はどうなの岩本さんとは。」




「どうもこうもないよ。普通。」




ひとしきり仕事の近況を報告し合った後、どうしても興味が移るのは恋愛事情。




「付き合って2年くらい？そろそろ結婚とか考えてるの？」




「まぁご縁があればってとこじゃない？わかんないけど。」




「わかんないってなんだよ。」




今の私に、未来のことなんて何もわからない。




「Aずっと岩本さんのことかっこいいって言ってたじゃん。」




「背が高くて鍛えてる人がタイプなんでしょ？そのままじゃん。」




「でも、Aには深澤さんってずっと思ってたけどな。」




「昔からの知り合いだったんだっけ？」




「ドラマみたいじゃん。」




ガヤガヤとした店内で思い思いに放たれる言葉たち。




「いや深澤さん結婚してるから。」




でもその中で、やけに翔太の言葉が耳について、




ほんの少し、本当に少しだけ、




胸が軋んだ。




そんな自分に嫌気がさす。




出会った頃からわかっていた。




あなたの薬指には約束を結んだ証が光っていることなんて。




「いやでも、そんなの関係ないよ。イケメンだからいいじゃん。」




「よくねぇわ。」




賑やかに重なる笑い声。




それなのに私の心の中はまだざらざらと引っ掛かりが残っている。





私のよくないところ。




そんなふうに笑い話に昇華できないところ。

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