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意識するようになったのは、いつ頃だっただろうか。
Aが入社して間も無く、ラボの撮影の手伝いをしてくれたことから話すようになった。
それから俺がちょっとした教育係みたいになって、関わりが増えていって…。
ふわふわして見えるのに、熱心というか根性があって、意外と笑いのツボがおんなじで、向けられた笑顔に段々と惹かれていった。
この関係を、今すぐどうのこうのするつもりは無いものの、ちょっとしたきっかけがあれば、近づこうとしてしまう自分がいるのも確か。
どうしたもんですかねぇ。と柄になく独りごちていると、不意にこちらに向かってくる背後からの足音に気づいて、心臓が大きく跳ねた。
うっそ、え、もうオバケ役の人いないんじゃないの？！と勢いよく振り返ると。
『す、須貝さん！！』
「うわっ、Aかよぉ〜！あーオバケかと思ったじゃん！びっくりしたわもー！」
『ご、ごめんなさい』
驚きを隠すように、ため息っぽい深呼吸をひとつしてAに向き直る。
「てか、なぁんで来たの。待ってなって言ったのに。俺が入った意味ないじゃんか」
『私の、仕事ですし、なんか、須貝さんだけに任せるのは、やっぱり、違う気がして…』
よほど勇気を出して入ってきたのだろう。
握ったままの力の入った手、強ばる表情、それに、体も声も、小さく震えているように見える。
「もー、Aは仕事熱心すぎるんだって。須貝さん、そゆとこ心配よ？いつも頑張ってんだから、任せられる時ぐらい任せたらいいんだって。全部自分が抱えて辛くなるより、出来る人が出来る時に、お互い補い合ってやりゃいいの。それがチームってもんでしょ？違う？」
『それは、そうかもしれませんけど…』
キュッと口を結んで視線を落とし、俯いてしまうAに。
違うんだよ、好きだから助けたいんだ。とか歯の浮くような台詞が素直に言えるわけもなく、先輩からのクソダルい説教になってしまったことに頭を抱えたくなった。
「ま、責任感あるAは信頼できるけど、もちょっと肩の力抜いても誰も文句言わんってこと。先輩とかって生き物は、案外頼られると嬉しいもんなん。特に、可愛い後輩ならなおさらよ？」
冗談めかしてそう言うと、ようやく顔を上げて少しホッとした表情のAと目があった。
『ありがとうございます』
困ったような笑顔が、また俺の心音を上げる。
(可愛い後輩がA限定だってことは、まぁ、気付いてもないんだろうけど)
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作者名：SEN | 作成日時：2021年10月16日 0時
