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「いやー伊沢はさぁ、まだホラー耐性あるじゃん。俺ほんと無いのよ、マジで苦手でしかないわけ…」
「でも須貝さんタイム早かったじゃないですか」
「後半ほぼ叫びながら走ってたもん、怖すぎて。あー…マジでめちゃくちゃ疲れた。精神がゴリゴリに削られた…」
撮影終了後のお化け屋敷の前。
ぐったりとした俺と伊沢がベンチに座り込んでいた。
「ちょっと俺水買ってくるわ…」
よろりと立ち上がり、近くの自動販売機に足を向ける。
すると、お化け屋敷の入り口の前で何やら立ち尽くしている人影が目に入って近づいた。
「どしたん?」
『あ、須貝さん。撮影お疲れ様でした』
「めっちゃくちゃ疲れた。叫びすぎて喉カスカスよ」
『外まですごい響いてましたもんね。ほんとに、お疲れ様です』
「んで?Aは何してんの?」
『ええと…実は中に貼った問題回収しに行かないといけないんですけど…なんか雰囲気が怖くて入るの躊躇っちゃって…』
Aの目線があからさまに揺れ、言いにくそうにしながら小さくため息をついた。
確かに、今回のような突拍子もないYoutubeの企画か何かの度胸試しでもない限り、お化け屋敷に1人で入るシチュエーションは人生においてまず無いだろう。
撮影も終了しているのでオバケ役の人も出て来ないと解ってはいても、雰囲気で二の足を踏んでしまうのは一経験者として頷ける。
「あ、じゃあ俺行ってこよっか?」
『え?!いやいや、そんなわけにはいかないです!ただ、ちょっとこう、入るのに勇気がいっただけなので!』
「いや、いいって、怖いんでしょ?俺1回行ってるしもうある程度耐性できてっから、すぐよ、すぐ」
『ダ、ダメです私の仕事ですから!』
「いいから待ってなさいって。あ、何だったらタイム計って出口で待ってくれてもいいし。さっきの半分で行ってくるわ。じゃ、そゆことで」
Aの頭をポンポンと軽く撫でてからお化け屋敷特有のゲートをくぐった。
(ま、こんぐらいのスキンシップはお駄賃としていただきますけどね)
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作者名:SEN | 作成日時:2021年10月16日 0時