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伊沢さんにステイの指示をされてから早1時間半。

追加で2杯のミルクティーとマフィンを頼んでしまっていた。

私がクイズノックで任されているのはほぼ編集作業なので、むしろ仕事は詰まっているぐらいなのだが。

受け渡しだけのために出て来たので、カバンの中には必要最低限の物しか入っていない。

仕事も出来ず、突然の膨大な隙間時間を埋めるものは目の前の携帯だけ。

しかもその電池も残りわずかと言う危機的状況だ。

これ以上待ち続けるのであれば、虚空を眺めながら待つか、諦めて帰るか、コンビニに充電器を買いに行くかの三択しかない。

しかし、買いに行ったタイミングで伊沢さんが来てしまうと行き違いになる可能性もある。

伊沢さんのことだから、連絡を取るまでもなく帰ってしまってもおかしくない気がする…。

そんなことを、先ほどからずっと頭の中で反芻していると。


「ごめんな!お待たせ!!」


1時間半前とは違い、いつもの私服に戻った伊沢さんがこちらに歩いてくる。

頭の中の悩みは一瞬にして、その笑顔で塗りつぶされてしまうのだから、私も大概だ。


『お、おつかれさまです』

「いやーごめんなほんと。ディレクターと次の話してたら遅くなちゃって」

『そう、だったんですね。あの…それで…』


自分が待たされていた理由を、今度こそは明確に聞こうと思った瞬間。


「じゃ、帰るか!」


その言葉に一刀両断にされて、綺麗に言葉を失った。

本当に、一緒に帰るためだけに、待っていてと言われていたようだ。

ならばと湧くのは次なる疑問。

何故一緒に帰るのか。

1人だと寂しいから?

どこかに寄る用事があって、そこに人数が必要だから?

1時間半の間に、使いっ走りを思い出そうとしていたから?

凡庸な頭の使い方しかしてこなかった私には、こんな曖昧な回答しか思いつかない。

頭の中は、1時間前からクエスチョンマークで埋め尽くされるばかりなので、そろそろエクスクラメーションマークのついた答えが欲しいところではあるのだけれど…。

伊沢さんに促されるまま席を立って、返却カウンターにグラスを返す。


『お待たせしました』


そして隣に並んだ瞬間に。


「俺、ちょっと寄りたいとこあんだけど、ついて来てくれる?」


また、不可解な言動が投下されてしまった。


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作者名:SEN | 作成日時:2021年10月16日 0時

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