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訳ではなかった。





「ただいま」

「おかえり〜今日もお疲れ…様?」



福良さんは、私が帰ってきた2時間後に帰宅した。
見慣れない紙袋を持って。
そして満面の笑みを携えて。

なんとなく、でも確実に、嫌な予感がした。



「ん?Aどうしたの?」

「いや、福良さんがあまりにも昼間とは違うもので」

「昼間ってなに?そんなに変わらないよ?」

「だといいんですけども」

「ねぇ、A」

「はい」

「Aが1番好きなのは?」

「福良さんですね。それ以外ないです」

「だよね?でもさ、今日何人もの人にしっぽ振っててさ、俺ちょーっと傷ついたなぁ」




そう言いながら、少しずつ間合いを詰められる。

1歩、また1歩。

トンっと背中が壁に着くタイミングと、福良さんの腕が壁に着くタイミングはほぼ同時だった。



「だからさ、トリックアンドトリート。イタズラ…というか指導?いや躾?もするけど、もちろんおもてなしもしてね?」



床に置かれた紙袋が、音を立てて倒れた。
中身を見て、全てを察した。

あぁ、ハロウィンをしっかり逆手に取られたってね。



「ねぇ福良さん、これじゃダメですか?」



ふにっと、昼間の棒付きキャンディを福良さんの唇に押し付ける。



「だったら、俺はこっちの方が嬉しいかな」



私の手元からキャンディを抜き取ると、ポケットから袋入りの飴を取り出し、中身を私の口の中へ入れた。



「ありがとう?」

「ふふっ、こちらこそありがとう。いただきます」



そう言って重なった唇に驚く間もなく、私と福良さんの間を行き来する飴玉みたいに、あっさり溶かされていった。


ハロウィンの夜はまだ始まったばかり。

立てば向日葵。[sgi]→←策士危うきは利用する。[fkr]



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りりぃ(プロフ) - シラユキ。さん» コメントありがとうございます!全て面白いなんて言っていただけて、嬉しい限りです⋆*リクエスト了解致しました。シラユキさんもご自愛ください𓂃◌𓈒𓐍 (9月24日 9時) (レス) id: 25bf53f7a7 (このIDを非表示/違反報告)
りりぃ(プロフ) - ばたこさん» コメントありがとうございます!リクエスト了解致しました⋆*ご期待に添えるよう頑張ります! (9月24日 9時) (レス) id: 25bf53f7a7 (このIDを非表示/違反報告)
シラユキ。 - お話全てが面白い短編集を見つけてしまった…リクエストいいですか…mnちゃんのお話を頼みたいです…!できればでいいのでお体に気を付けて頑張ってください! (9月18日 15時) (レス) @page36 id: fd9c934f53 (このIDを非表示/違反報告)
ばたこ(プロフ) - いつも応援してます!リクエストなのですが、東言さんのお話みたいです、!更新ゆっくりで大丈夫です!! (9月18日 11時) (レス) id: 2432bd82c3 (このIDを非表示/違反報告)
りりぃ(プロフ) - 葵さん» コメントありがとうございます!ものすごく嬉しいお言葉ばかりでニコニコが止まりませんでした*°今は少し忙しくまばらな更新になってしまいますが、是非お待ちいただけると幸いです!ありがとうございます! (2023年3月31日 1時) (レス) id: 25bf53f7a7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:りりぃ | 作成日時:2022年9月24日 16時

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