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──ねえ、すこしだけ、昔の話を聞いてくれないかな。
そう物語の始点を打ったときの、「すこし」とは一体いつのことを指すのが無難なんでしょうね。
ほんの数ヶ月か。
あるいは、数十年ほど前か。
ああ……けれども、今の俺が思い起こすはそれよりもっと、ずうっとずうっと前のこと。
百年も、二百年も。それ以上も前のこと。
もしかしたら前世みたいなものかも?
……だなんて。
ファンタジーは俺より専門的なひとがいるので、さほど詳しくはない方なんですけど。
『……司祭さん?』
けれども、そんな曖昧な曖昧すぎる記憶にすら縋りたくなってしまうほど、俺は。
俺はあの短く、甘いだけの虚構に溺れたままで。
あはは。ホントにだめですね。
『ああ、よかった。司祭さん。
あの人が呼んでいて……できれば、今すぐに』
『うーん、またですか。人使いが荒いんですよね』
彼がいて、彼女がいて。
それは今も昔も変わらないことだと言うのに、何が違うんでしょう。
「あいにくだけれど。
残念ながら彼女のことは見殺しにするつもりだよ」
単純に、時代なんでしょうか。
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作者名:こめこ | 作成日時:2018年10月1日 19時