透明な季節【まふまふ】 ページ2
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子供の頃に夢見た恋愛小説の中の主人公は綺麗で太陽の光で透けた湖の中心にいるような純朴で可憐な少女だった。
いかにも子供らしくメルヘンチックな絵本のような内容なのに何回も読み返してそのファンタジーの物語の見届け人のような気分になっていた。
学校の中で国語という存在を知ってからは文学作品が好きになって日本の古語の本を読み返したり海外の非現実的で儚げのある言葉に興味を引かれ、深く掘り下げたくなったりとか夢中になりながら本の世界へと入り浸っていて時間を忘れるほどに楽しかったり。
それが恋へと話が変われば感情が豊かになったりと桜が咲いた時みたいに淡い気持ちに包まれる。そんな暖かいものだと思ってた。
「何それ〜!めっちゃおもろい!」
__嘘だ。
「俺も同じこと思ってた!」
__あれも嘘。
「ね〜!分かる!」
__絶対に理解出来ていない。
教室に雑踏の声があちらこちらから聞こえてくる。心の中で指をを指しながら自然に耳が傾く話の内容は殆どが嘘で塗り固められている。都合のようなもので他人を利用して自分を必要な存在として魅せようと感情を繕って話の中へと入り込むつもりらしい。
窓際で頬に手を当てながら私はまだ一番素直に見える外の景色を眺めながら心の中で退屈をしていた。
人間の現実は基本的にこんなものだ。私は国語だけではなく人間心理を深く知ってしまった方だから感情論的なものはプロ並みに語れるわけじゃないけど大概なことは全て把握出来た。
声質、言動、癖。なんなら今文章に例えて表現することだって出来る。
人間不信、といってもそこまで私は黒い部分がある方ではない。
もちろん家族は信頼している、唯一の寛ぎだから。まぁここまでくれば何様だって言われても仕方ないため言い返すことも出来ないんだけれども。
私だって欠点があるから変わりないと思うし人と話そうと自分から近づいて努力したけどやっぱり中々自分から話せなくて。
結局夢を見すぎていた。そんな純粋なものが簡単に出来るわけが無い。素直なのは外に見える自然の景色だけ。
現実はネガティブで
色は見えない。単純に水彩画のキャンバスに灰色という形変わりも捻りもない朧気な色をつけて終わり。赤も青も鮮やかな色彩がつかない単調で憂鬱な物語。
私はそれを面白いとは捉えられなかった。
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作者名:夜紅茶 | 作成日時:2020年6月9日 16時