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花屋から離れて私は街角にある紅茶の店に立ち寄ろうとしていた。フレーバーの種類が豊富なため奥様に購入していこうかと考えていた。
「いいじゃない、私たちと遊ぼ?」
「えぇ…そんな事言われてもなぁ。」
すると道の端に四、五人の女性達に囲まれていメガネの男性を見つけた。けれど私には関係の無いことなのでそのまま通り過ぎることにした。
「…あ、Aやんか!」
「えっ?」
「俺、用事出来たから」と言って彼は此方へと向かってきた。後ろの女性達から物凄いオーラが見えているが、関係なしに私の腕を引っ張っていく。
「えっ!?」
「とにかく着いてきて!説明は後!」
「えぇー!どこ行くのー!!」
女性達から離そうと私は彼のペースに飲み込まれ何故か一緒に人があまりいない細道まで連れていかれた。
えっ…この人誰、もしかして誘拐!?
「ふぅー…撒いたみたいやな。」
「…あの?」
「あ、腕掴みっぱなしやったわ。」
そう言って彼は私の腕をすんなりと離してくれたけど、私が言いたいのはそういうことじゃない。
「あの失礼ながら…誰ですか?」
「えっ?…あぁ!ごめん、顔見えなかったよな?」
彼が大きめのキャスケットとメガネを取ると花のような紫苑色の瞳がハッキリと見えた。ラベンダーのほのかな香りが私の記憶を鮮明にしていく。
「つ、月崎さ…っ!」
「こら、あんまり騒がんといて。」
月崎様は私の唇に「しーっ」と言いながらそっと人差し指を置いた。頬には熱が帯びていくが小さく頷いた。
「お忍びで楽しもうと来たつもりなんやけど…気づけばいろんな人に絡まれとったわ。」
女性とかにこういうことをしてるせいですよ。と助言を言いたかったがあえて私は苦笑いでその場を流した。
「そういえばなんでAはあんな所いたん?」
「おつかいが終わって空き時間ができたので少し買い物をと…」
「そっか、んじゃあそれ俺も着いてっていいか?」
「え?いいですけど…その、月崎様は楽しまれなくてもよろしいのですか?」
「楽しいか楽しくないかは俺が決めることやから!ほら行こ!」
紅茶のフレーバーを買いに行くだけだが彼は私に案内も含めて一緒に歩きたいと言ってくれた。
だがそれで本当に彼が楽しめるのだろうかという疑問を持ちながら細道から街の方へと歩いた。
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作者名:夜紅茶 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/qZN5vxyJ6V2/
作成日時:2019年3月18日 7時