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「ここにわざわざ君に来てもらったのは渡しておきたい物があったから。」
「どうぞ?」と言われて手渡されたのは白縹色の封筒。真ん中にはある国の文様付きの封蝋がされてあった。
中を見るとそこにはまたもや招待状が入っており、差出人の欄を見るとそこには『パールライン』の国名が記されていた。
「これって…」
「それはそらるさんから、内容は見たらわかるよ。」
言われた通りに目を通すとそこには『国へと招待する』というシンプルな一行が書かれていた。あまりにも意外で私は声が出てこなかった。
一ノ瀬様が…私に?
「詳しい事は向こうに着いたら説明するって。君に直接渡しに行きたかったらしいけど急な仕事が入ったらしく、僕に頼まれたってわけ。」
「…なるほど。」
「本人曰く『仕事が落ち着いてからでいいよ』って言ってた。」
もしかして私が仕事があるからと拒否を入れるかもしれないと配慮してくれたのかな?
急にとは言わないのはやはり一ノ瀬様らしい考え方だなと思った。
「もし準備が出来たら言って?その時は俺も同行させてもらうから。」
「えっ…しかし執務の方は?」
「いろいろと向こうの方で困ったら助けてくれる人だっていないでしょ?仕事は直ぐに片付け終わるから平気。」
…なんかいろんな人に助けられてばっかだ。迷惑だと思われているかもしれないのに、本当に情けない。
「とりあえずそういうことだってことを頭に入れといて?」
「…はい。」
私は渋々頷くと、彼は赤茶けた瞳を細め優しい顔を浮かべ私の方を見た。
「うん、よろしい。じゃあ迎えの馬車を用意するよ。」
「え、そこまでなされなくても…」
「もう外は夜だよ?暗い夜道の中で一人歩かせるわけにもいかないでしょ?」
「とりあえず送るから」と言われたので彼がドアを開け、私のことを待っていてくれた。天宮様の優しさに私は甘え、客室を後にした。
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作者名:夜紅茶 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/qZN5vxyJ6V2/
作成日時:2019年3月18日 7時