last sweet ページ49
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灰青色の薄らとした光が差し込む朝。手触りのいい布団の上であどけなく眠るAの心地よさそうな寝顔。
柔らかく透き通ったアッシュブラウンの髪に手を伸ばし、軽く掬ってみれば簡単に俺の指の間を通って水のように落ちていく。
(起きたらどんな反応するんだろ)
普段の日常とはちょっとだけ違う今日。俺が触れたことに気づいたのかAは瞼をゆっくり上げてぼんやりした様子を目で追いながら、唇を綻ばせた。
*❋✵❋*
「おはよ」
微かな朝日に照らされ、うっすらと見え始める筋肉質の雪肌。耳障りの良い声に導かれ、頭が働かない状態で視線を少しだけ上に向ければ、ビリジアンの瞳を細めたうらたさん、ではなく渉さんの姿。
「おはよ〜…」
「相変わらず朝は弱いのな、今にでも寝そう」
「ふふっ、今日はいつもより眠いかも」
渉さんは私の左手に指を絡ませてそのまま私の手の甲を自分の唇の前まで持ってきて口付けをする。
___その時
「えっ」
自分の左手に何か違和感を感じ、頭の中がはっきりとする。
何かの間違いかもしれないと確認すると、私の視覚に映ったのは陽の光が反射して輝く薬指の根元_銀色の指輪。
「渉さん、これっ」
私は何も纏っていないことをも忘れ、布団の中から飛び起きた。隣で横になっている彼の表情を見ようとすれば渉さんも体を起こしてこちらを見つめ返す。
「_結婚しよう」
その瞬間、目頭が熱くなり鼓動が少しづつ早くなる。
自分でもこんな瞬間を経験できるとは思わなくて、幸福感が波のように押し寄せて言葉も出てこない。
私は_首を小さく縦に振った。
すると渉さんは私の背中に手を回し、正面から優しく抱き締めた。それに安心して、私は自然と涙が出てきてしまった。
「泣きすぎ」
「だって、嬉しくて…っ」
「…やっと言えた」
渉さんはやんわりと私から距離を取り、私の両頬を手で包み込む。「落ち着け」と優しい目で言われるもののやっぱり止められなくて。
「大好き」
「俺は愛してる」
私達は親愛を込めた言葉を囁く。
陽の光を浴び、お互いに愛を感じながら時間をかけて唇を重ね続けた。
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夜紅茶(プロフ) - ちょこさん» コメントありがとうございます!その後に関しましては全員登場してから考えようかなと思っています!次のシリーズも執筆準備中ですので長い目で見ていただければありがたいです! (2022年4月2日 11時) (レス) id: 2017f33955 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ - とてもよかったです!その後話が欲しい!あとセンラさんのお話も楽しみに待ってます! (2022年3月9日 2時) (レス) @page50 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
夜紅茶(プロフ) - りとさん» コメントありがとうございます!最後の部分は結構構想練りながら考えたところなのでとても嬉しいです! (2021年7月4日 15時) (レス) id: 2017f33955 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - コメント失礼します!最後泣いちゃうぐらい最高でした。ありがとうございます (2021年7月4日 11時) (レス) id: 00ec0e89a7 (このIDを非表示/違反報告)
柴イヌ - 返信ありがとうございます!是非、これからも見させていただきます! (2021年2月21日 23時) (レス) id: 525b615957 (このIDを非表示/違反報告)
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