sweet×42 ページ43
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軽く押された背中。気づけば私は考え無しに家から飛び出していた。
(こんなに走ったのは“あの時”以来だ)
自分の今の姿が部屋着だとかメイクもなしに大通りを駆け抜けていることとかそんなことも頭から抜け落ちていた。
学生時代は運動部に入っていた訳でもないのに慣れない走りに私は全力を尽くす。
「っ!すみません!」
行き交う人と肩がぶつかった。しかし私は目も合わせずにすぐさま走り出す。交通機関を使うことすら忘れて私はたった二本の足で地面を強く蹴る。
会いたいという気持ちが自分に急げと命令する。
(今、凄い必死だ)
こんなに死に物狂いで焦ること、家族以外なかったはずなのに。自分でもこの感情になる理由は何となくわかっていた。
そう思っているうちに見えてきたのはあの二つの信号機と横断歩道。少し離れた視線の先には既に修繕された電信柱。
「どこ…」
大きく肩を使って息を整える中、私はあの姿を見逃さまいと目で探した。今は赤信号だから向こうには渡ることは出来ないけれども視線を端から端まで見張らせる。
「きゅ」
突然足元から聞こえた微かな鳴き声に私は咄嗟に下を向く。黒い羽のついた茶色の小さな獣が真顔でこちらを見つめている。
私は自然に両手を伸ばすとその手は空を切り獣は横断歩道の方へと駆けた。
「待って!!」
私は人混みを掻き分けて道路へ飛び出した。ここで目を離してしまったらもう二度と会えなくなるかもしれない。
しかし、私は今を忘れていた。
「っ!」
三色の信号は青、対して二色の信号は赤。右から感じたのは大きな期待がこちらに向かってつんざくようなクラクションを鳴らし、私は車のヘッドライトを見ながら立ち尽くしているだけ。
その瞬間、景色と音がスローモーションになる。
「__お前、死ぬ気か?」
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夜紅茶(プロフ) - ちょこさん» コメントありがとうございます!その後に関しましては全員登場してから考えようかなと思っています!次のシリーズも執筆準備中ですので長い目で見ていただければありがたいです! (2022年4月2日 11時) (レス) id: 2017f33955 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ - とてもよかったです!その後話が欲しい!あとセンラさんのお話も楽しみに待ってます! (2022年3月9日 2時) (レス) @page50 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
夜紅茶(プロフ) - りとさん» コメントありがとうございます!最後の部分は結構構想練りながら考えたところなのでとても嬉しいです! (2021年7月4日 15時) (レス) id: 2017f33955 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - コメント失礼します!最後泣いちゃうぐらい最高でした。ありがとうございます (2021年7月4日 11時) (レス) id: 00ec0e89a7 (このIDを非表示/違反報告)
柴イヌ - 返信ありがとうございます!是非、これからも見させていただきます! (2021年2月21日 23時) (レス) id: 525b615957 (このIDを非表示/違反報告)
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