sweet×35 ページ36
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「課長、お疲れ様です」
「おぉ、君か。お疲れ」
お昼休み。いつもなら隣のデスクに座っている先輩を誘ってお昼ご飯を一緒に食べようかな、なんて考えている時に限って結局勇気も出ないものだから誘おうと思ってもそのチャンスを逃すことが多い。
けど今日の場合はそのチャンスもなく、ましてや姿も見えない。
「課長、A先輩の家の住所はご存知でいらっしゃいますか?」
「もちろん知っている…が、何故必要以上に気にかける。事前連絡もなく無断欠勤をするせいで仕事に支障が出るんだぞ。そんな奴にかまける必要性は感じないだろう?」
酷い言われ様だ。それもそのはず、私と先輩の仕事量の差は入社歴云々どころの差じゃないくらい多忙すぎると思う。毎回の如く思うのは本当に休めているのかなと心配になるくらい。
上司の他の人達の先輩を見る目が腫れ物扱いのようで、ふつふつとストレスが溜まっていく。
「お言葉ですが課長」
苛立ちの顔を見せまいとにこりと愛想笑いで裏に隠して、なるべくローペースで話を切り出した。
「最近、随分お仕事の切り上げがお早いようで」
「所用があるから早めに切り上げてるんだ。仕方の無いことだろう?」
「では、この名刺に見覚えは?」
持っていたA4ファイルから小さな紙を取り出した。そこには『クラブ・ルネ』とカタカナで書かれたキャバクラらしきクラブの名前が。
それを目にした途端、課長は分かりやすくぎょっとした。
「蒼宮ノエルさん…随分愛らしいお名前の方ですね。課長のワークデスクの上に…いや“堂々とど真ん中”に置かれていたので、つい気に停めてしまいまして」
「い、いやそれは…見覚えはない!誰かがわざと私の机の上に落としたんじゃないか?」
「あら…しかし、そうですよね?まさか課長でもあるお方がお仕事を疎かにしてまで娯楽に勤しむはずがありませんもの。仮にそんなことをしていらしゃったのなら、今頃上層部とご家族様にご報告をさせていただいているところでした」
うふふ、と表では笑ってみせたが心の中ではそんな馬鹿な言い訳が私どころか他の人に通用するはずがないと思っていた。弱みは握られる前にバレないように隠さないと誤魔化しも全部嘘だと分かる。
それを踏まえた上で、私はもう一度汗水垂らして目を泳がせる上司に一つ問いを投げかける。
「では課長、AA先輩のお家はどこでしょうか?」
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夜紅茶(プロフ) - ちょこさん» コメントありがとうございます!その後に関しましては全員登場してから考えようかなと思っています!次のシリーズも執筆準備中ですので長い目で見ていただければありがたいです! (2022年4月2日 11時) (レス) id: 2017f33955 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ - とてもよかったです!その後話が欲しい!あとセンラさんのお話も楽しみに待ってます! (2022年3月9日 2時) (レス) @page50 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
夜紅茶(プロフ) - りとさん» コメントありがとうございます!最後の部分は結構構想練りながら考えたところなのでとても嬉しいです! (2021年7月4日 15時) (レス) id: 2017f33955 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - コメント失礼します!最後泣いちゃうぐらい最高でした。ありがとうございます (2021年7月4日 11時) (レス) id: 00ec0e89a7 (このIDを非表示/違反報告)
柴イヌ - 返信ありがとうございます!是非、これからも見させていただきます! (2021年2月21日 23時) (レス) id: 525b615957 (このIDを非表示/違反報告)
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