別れの時 ページ44
ガチャリと家のドアを開けると、すぐにタタタタとあかねが走ってきた。
茜「おかぁりぃー」
母親が迎えに来たのが相当嬉しいのか、元気よくお出迎えをしてくれた。
ニ「…おぉ。ただいま」
俺は元気なく答えた。
茜「パパぁー、ママぁー、みて〜」
智に教えてもらったのか、クネクネと体を揺らして踊り出した。
ニ「おー上手、上手！」
夏「茜〜サトシみたいだね〜♪」
だいぶ違うけどな。
俺らに褒められた茜は、ご満悦そうにニヒーと笑みを浮かべ、智の顔を見ながらひたすら踊っている。
あかね…
夏「さ、茜。もう行くよ」
母親の言葉に、あかねの動きがピタッと止まった。
茜「どこいくのぉ？」
夏「ママのお家。これからは、ママとおじいちゃんとおばあちゃんと一緒に暮らすのよ？」
茜「パパとさとちはぁ…？」
ニ「………」
夏「パパとサトシとは…今日でバイバイ」
するとあかねが、俺の脚にしがみついた。
茜「パパもいくのっ！さとちもいくのっ！」
ニ「あかねっ…」
大「あかね…」
やがてあかねが、大声を上げて泣き出した。
俺と智は顔を見合わせた。
仕方がないんだ。
だって俺と智は、あかねの親でも何でもないんだから…
俺は体を屈め、大粒の涙を流すあかねの頭を撫でた。
ニ「…泣くな、あかね。ママと一緒に行きなさい」
ひっくひっくと、体を震わせながら俺を見るあかね。
小さな頬を濡らす涙を、親指でそっと拭った。
涙で真っ赤になった目で見られ、思わず目を背けた。
夏「茜ごめんね…パパはね…」
そこまで言いかけた彼女に向かって、俺は頭を横に振った。
酷な嘘かもしれない。
だけど、今だけは愛のある嘘をつかせてほしい。
俺は泣きじゃくるあかねを抱っこした。
ぎゅうと縋り付くように抱き着くあかねの頭を、よしよしと撫でた。
ニ「…泣かない泣かない。あかねは強い子でしょ？」
グリグリと目をこするあかねの背中を、ポンポンとした。
ニ「じゃあ、あかね。パパのお家にあるもので欲しいもの１コ持っていきな？」
優しい口調で言い聞かせると、あかねはメソメソとしながら、俺の首に下がっているネックレスのリングを掴んだ。
ニ「あ…それは…」
大「あかね。そのパパのネックレス持っていきな」
智…
俺は首からネックレスを外し、あかねの首にそっと掛けてあげた。
俺と智にとって特別なネックレス。
そのくすんだリングを、あかねがギュッと握りしめた。
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作者名：さくら 樹里
| 作成日時：2018年5月19日 14時
