あかねの母親�� ページ40
そして日曜日。
俺の夏休み最終日。
智も仕事がオフだったから、思い切って3人で遊園地に行くことにした。
その事をあかねに告げた途端、嬉しそうに朝からハシャいじゃって。
ぴょこぴょこと飛び跳ねるあかねにシーと注意をしながら、ニッコリと笑ってみせた。
あかねが喜ぶ姿が、純粋に嬉しかった。
智とも目を合わせて、フフッと微笑み合った。
本当は手作り弁当でも持っていけたらいいんだけど、残念ながら俺にそんな高度なことは出来ない。
大人しく遊園地の中にある店で買って食べよう。
ある程度家のことは済ませ、3人の準備も整って、いざ出発！
先に俺が靴を履き、あかねが靴を履こうとした時、「おしっこ〜」とあかねが言い出した。
そして何故か智まで「あ、俺も」と言い出して。
そんな二人の姿が可笑しくて、フフッと笑いながら、俺は先に外へ出た。
ミンミンジージーと蝉の声が響く空。
雲一つない青空で。
既に気温も高く、日差しが眩しかった。
遊園地に着いたら、あかねに帽子でも買ってあげよう。
そんなことを考えながら、空を飛ぶ鳥を目で追っていた。
ふわりと柔らかい風が自分の髪をなびかせた時。
誰かがアパートの階段を上がってくる音が聞こえた。
俺は特に気にもせず鳥を目で追っていると、やがて人が近づいてくるのが横目に映った。
チラリとその人の方へ視線を向けた。
一瞬、時が止まった。
ロングスカートを履いたショートボブの女が、俺を見ている。
その瞳に、見覚えがあった。
ニ「あ・・」
神崎 夏海。
俺の元カノで。
あかねの母親だ。
夏「久しぶり…和くん」
ニ「…おぉ。久しぶり…」
すぐに気まずい空気が流れた。
久しぶりに見た彼女の姿は、顔はそんなに変わってはいないけど、だいぶやつれたように見える。
夏「あの…茜は…」
ニ「…いるよ」
そう言ってドアの方に顔を向けた時、ちょうど扉が開いた。
智と一緒にキャッキャとハシャギながら、あかねが家から出てきた。
夏「茜っ…！」
その声に反応したあかねが、すぐに彼女の方を見た。
母親の姿を見た途端、あかねの顔が歪みだした。
茜「ママっ…」
すぐにお互いに駆け寄り、あかねは母親に抱き着き、そのあかねを彼女はギュウと抱きしめた。
夏「ごめんね、茜っ…ごめんねっ…」
茜「…ふえぇぇっ…マぁマぁぁ…」
感動の再会であろう母娘(おやこ)の姿に、俺は複雑な気持ちでいっぱいだった。
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作者名：さくら 樹里
| 作成日時：2018年5月19日 14時
