輝くダンサーと見守る親子�� ページ28
俺の胸にしがみついて泣くあかねの頭をよしよしと撫でた。
そのうち、ヒックヒックとしゃっくりが出だしたあかねの背中を、サラサラとゆっくり撫でながら、時折ポンポンと一定のリズムでたたいた。
今のあかねの姿を見て思う。
ウチに来てから今日まで、涙を流すことなくキャッキャと笑いながら、明るく楽しそうにしていたけど。
本当は母親がいなくて寂しかったんだ。
きっと幼いながらに、毎日我慢していたんだと思う。
母親が迎えに来なくて一番辛いのは、俺でも智でもない。
あかねなんだ。
それなのに俺は、あかねよりも子供みたいにブーたれて。
情けないよ…
俺はあかねを抱っこしたまま立ち上がった。
背中をポンポンとしながら、体ごとゆらゆらと動かした。
ニ「…あかね。ママ、絶対迎えに来るからな…？だから、パパと智と一緒に待ってような？」
俺の腕の中で、コクンと頭が動いた。
ニ「よしよし…良い子良い子。あかねは強い子だな」
そう言って、あかねをなだめる自分の姿が、まるで父親のようだった。
泣き止んだ後も、しばらくめそめそしていたけど、ようやく気持ちが落ち着いたのか、今は美味しそうにカレーを頬張っている。
その姿に、心の底から安堵した。
そして気付けば、音楽番組が始まる時間になり。
録画の準備もバッチリ。
まだかまだかと、二人してテレビからひと時も目を逸らさずに待っていると。
ようやく画面に智の姿が映し出された。
茜「パパ、さとちぃ！」
ニ「お、おおお！智だ！智だ！」
興奮気味の俺は、ソファに座って前屈みの姿勢になって、よりテレビの画面を凝視した。
するとあかねが、テレビに張り付くようにして見だした。
ニ「あかね。こっちおいで」
俺の方を向くあかねに向かって、ポンポンと自分の膝を叩いた。
トテトテと嬉しそうに近づいてくるあかねを抱き上げ、自分の膝の上へ座らせた。
男性ボーカルの歌声に合わせて、智が踊っている。
最近人気の曲だが、その曲に埋もれない智のダンス。
相変わらずしなやかで、人の目を惹きつける。
ライトを浴びて踊る智の姿が輝いていて。
互いに笑顔で目を合わせる姿に、完成した音楽を感じた。
茜「さとち、かっこいいネ！」
ニ「うん…カッコイイね」
茜「ママ、さとちがすきってゆってた」
ニ「…そっか。パパも…智が大好きだよ」
今この瞬間。
目に見えない家族の姿が、映し出されたような気がした。
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作者名：さくら 樹里
| 作成日時：2018年5月19日 14時
