狂人島【オワリの始まり編】 (ページ42)

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涙① ページ42

ザクッッッ

鋭い刃が身体に突き刺さる音がした。

ナイフは俺の胸ではなく。

俺の前にいるニノの胸に突き刺さっていた。

ニノが俺をかばったんだ。

ニノの左胸を突き破るナイフを、翔ちゃんが勢いよく引き抜いた。

その反動で、ニノの身体が踊るように揺れた。

真っ赤に染まるナイフ。

そのナイフを、翔ちゃんが再び振り上げる。

翔ちゃんの左耳についているピアスが、キラリと光った。

俺は考える暇もなく、持っていた拳銃を翔ちゃんに向けた。

頭が追いつく前に、指が勝手に引き金を引いた。

バァンッッッ

翔ちゃんの額から血が吹き出し、弾の勢いで頭が折れたようにグワンと後ろに倒れ、そのまま反り返るように砂浜の上へ弾き飛んだ。

俺は拳銃を捨て、カクンと崩れ落ちるニノを後ろから抱えた。

グッタリと俺に体重を預けるニノ。

一方、砂浜の上で仰向けに倒れている翔ちゃん。

翔ちゃんの目が上を向いたまま、一切瞬きをしない。

その姿で、もう息をしていないのはすぐに分かった。

俺が翔ちゃんを殺してしまった

雅「…翔ちゃんっ…ごめんっっ…っ…ごめんねっっ…っ…ごめんなさい翔ちゃんっっ…っ」

ニノを抱きかかえながら、もう俺の声が届かない翔ちゃんに謝った。

砂の上に膝をつき、細く息をするニノを横向きに抱え直した。

俺の腕に頭を預けるニノの服が、どんどん赤く染まっていく。

赤く染まった胸を手で押さえた。

だけど、俺の手を跳ね返して、生温かい血液がドクドクと溢れ出てくる。

止まることのない真っ赤な血を、俺は虚しく見下ろすことしか出来なかった。