新たな味方�� ページ35
さっきまで俺に壁ドンをしていた男は、兄貴にペコペコと頭を下げながら逃げるように去っていった。
一方、兄貴はいまだに俺の肩を抱いていて、その密着度が妙に体温を上げた。
気まずそうに体をモゾモゾとさせると、やっと肩を抱く腕から解放された。
智「かず、なんだ今のは」
急にいつもの調子で話し掛けられ、鞄を抱きしめる自分の肩の力がスーっと抜けた。
ニ「…えっと…急に声かけられて…な、なんか気付いたらあんなことになってて…」
頭の中がまだ混乱していて、上手く言葉が出てこない。
智「なんじゃそら。アイツ何考えてんだ」
ニ「て、ていうか、兄貴、今の人と知り合いなの…？」
智「アイツ後輩だよ」
ニ「えっ、こ、後輩！？」
櫻「智はバドミントン部の部長だったからね？」
櫻井先生が会話に入ってきて、途端に俺の胸がドキンと鳴った。
ニ「そ、そうだったんですか…」
そう言えば、兄貴がここの卒業生だということをすっかり忘れてました…
智「翔ちゃんに名前で呼ばれると、なんか変な感じすんなぁ」
櫻「仕方ないだろ。もう、大野て呼ぶわけにもいかないしさぁ。それよりも。俺をちゃん付けで呼ぶなって何度も言ってるよね？」
智「いいじゃん、翔ちゃんて呼びやすいんだもん」
櫻「こーら。言っておくけど、俺先生だからな」
二人の会話を聞きながら、本当に仲が良いんだなぁ…て感心と呆然の狭間くらいの感情で二人にチラチラと視線を送った。
すると、二人の会話がピタッと止まって、一斉に視線を向けられた。
櫻「二宮。大丈夫だったか？」
ニ「あ…は、はい…特に何事もなく…」
智「松本潤くんは？」
ニ「も、もう部活でグラウンドにいると思う」
智「あ、そっか。サッカー部だっけか」
櫻「松本、油断するとすぐサボるんだよなぁ」
兄貴がケラケラと笑う。
ニ「あの…兄貴はなんでここにいるの…？」
何よりも、まずそこが聞きたい。
智「翔ちゃんが俺に会いたがってるって言うから会いに来たんだよ。そしたら、かずがアイツに引っ張られていくから」
櫻「アイツ俺の学年の生徒だからね。後でちゃんと言っておくよ」
ニ「ありがとうございます…」
智「そんで翔ちゃん」
櫻「だから…ま、ま、いいや。どうした？」
智「ちぃっと大事な話があんだけど」
櫻「大事な話？」
智「出来れば、誰にも聞かれないとこで話したい」
そう言って兄貴は、俺の肩にポンと手を乗っけた。
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作者名：さくら 樹里
| 作成日時：2020年2月16日 1時
