僕の隣には亡霊がいる (ページ7)

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六話ページ7

「……ん？」

「あ……」

外を眺めていた人は僕に気がついたみたいで、すぐに近寄ってきた。

部員なのか分からないけど、とにかく高い身長が印象に残った。

「お前、この部の人？」

「い、いえ……、違います」

話しかけられた僕は、少し戸惑いながらも答えた。

「あ、一年？もしかして、弓道部に入部したいやつ？」

「は、はい……」

「なら、俺と一緒じゃん」

「え？」

「俺、一年三組の慎也(しんや)。よろしく」

「えっと、一年八組の想空です。よろしく」

自然と差し出された手を握り、握手をする。

え。ど、どうしよう。何か会話を……。

「え、えっと、今この部室には弓道部の人、一人もいないのかな？」

「まぁ、そういうことになるな。俺来た時も誰もいなくて、出直そうと思ったけどやめた」

「そう、なんだ」

だめだ……。全然上手く話せない……。

それに、緊張しているせいか、無意識に肩に力が入っちゃう。

相手が碧人だったら、もっと上手く話せるのに。

なんて、急に消えた亡霊のことを思い出しても仕方ない。

今は、目の前にいる彼と会話をしなくちゃ。

そんなことを考えながら、この沈黙を破ったのは相手の方だった。

「あー、想空は何で弓道部にしたの？」

「ええっと。まぁ、新しいことに挑戦してみたくて。

……あとは、人から勧められて、気になったからかな」

「へー、親？」

「いや」

「先生とか？」

「まさか」

ここで僕が「亡霊」なんて言ったら、どういう反応をするのだろう。

……久しぶりに人と話してるし、できることなら仲良くなりたい。

だから、変に思われたくない。

「じゃあ誰？」

「……友達」

僕はそう答えていた。