僕の隣には亡霊がいる (ページ15)

今日:5 hit、昨日:0 hit、合計:5,081 hit

十四話ページ15

「あれ」

キーンコーンとチャイムが鳴り、そそくさと準備をし部室へ向かった。

が、部室には誰もいなかった。

「鍵開いてたから誰かはいると思うけどな。弓道場とかで練習してんじゃね？」

「ん」

僕は碧人の言葉に短く答え、制服のまま弓道場へ向かった。

――――――――

「あ」

窓から覗いてみると、春華先輩が一人で練習をしていた。

弓を引くだけの、練習。

僕みたいな初心者にとっては、先輩達が練習している姿を見るだけでも勉強になるし、練習になる。

「ふぅ……あら、想空くんじゃない」

視線に気が付いたのか、春華先輩がこちらを見る。

「お疲れ様です」

「ふふ、来るの早いわね」

「先輩も早いですね」

「真面目だもの」

春華先輩はそう言いながらタオルを取った。

「さて、そろそろ休憩しようかしら」

「……ん？そろそろって……え？」

「ふふ、いつから練習してたのかしらね。私」

ふふって……。

十分前から練習していたとしても、まだ授業中。

もしかして春華先輩、授業サボって……？

「どう？弓道、少しは慣れたかしら？」

「はい。まだ徒手練習ですが……」

「大丈夫よ、その練習とても大事だから。それに想空くん器用だもの、羨ましいわ」

そう言って春華先輩はニッコリ微笑む。

春華先輩は、この部で一番優しい人だと思う。

いつも褒めてくれるし、先輩の方が絶対器用だ。

「そうだわ！実際に矢をつがえてやってみない？」

「……え？」

「……さっすが、面白いこと言うねぇ」

碧人がニタニタした顔で先輩の周りを飛ぶ。

「あら？風？不思議ね、こっちから吹くなんて」

「気のせいですよ」

「そうかしら。まぁ、とりあえずやってみましょ！ほら、着替えて着替えて！」

「え、ちょ、」

僕は背中を押されながら、着替えに部室へと向かった。