【鬼滅の刃】ハッピーエンドを目指して６【煉獄杏寿郎】

貴方の怖いもの　肆　☆* ページ9

「ん…美味しい…

千寿郎君、ありがとうね。」


そう言うAがふいに儚く見えて、俺は思わずAを抱き締める腕に力を込めて、項(うなじ)に頭を埋める。


「…杏寿郎さん？」

「…ほら、気にせず沢山食べるといい。」


静かな部屋に、カチャカチャと食器の音と、チリンと風鈴の音が響く。


「…美味しかった。

千寿郎君、ご馳走様でした。」

「お粥は置いておきますから、食べれそうな時に食べて下さいね。

食器はそのままで大丈夫です。

後で取りに参りますから。」

そう言って微笑んで、千寿郎が部屋を出ていく。



どうしてだろう、こんなにも不安に思うのは。


人を恋うると言う事は、人を強くもするが弱くもするのだな。


君を守りたいと思う時、俺は何処までも強くなれる気がする。

君を失う事を想像する時、俺はこんなにも脆く不安になってしまう。


「早く元気になってくれ……」


俺は回した腕に力を込める。

Aは、その俺の腕をきゅっと掴む。


「もう、元気になりましたよ。」

「それは嘘だな。

まだこんなに体が熱いし、ふらふらしてるじゃないか。」

「へへ…バレちゃいましたか。」

Aはそう言って微笑んで、こんこんと咳き込んだ。



「―――風邪は移すと良くなると聞く。」

俺がAの頬に手のひらを添えてこちらを向かせると、Aは自身の口を手で隠した。

「移すのは駄目です。」

「君が苦しむのは見てられん。

君の言う事はきかない！」

俺は彼女の手を掴んでどかすと、唇を重ね深く深く口付ける。

逃げようと身を引く体を強く抱き留め、Aの頭を離れない様に押さえつけた。


彼女の口の中が熱い。

たっぷりと彼女の口内を蹂躙し、そっと唇を離す。

熱のせいで潤んだ瞳が、俺を見つめる。


「…そんなに不安な顔をしないで下さい。

大丈夫、すぐ良くなりますから。」


Aはそう言って、俺の胸に頭を寄せ抱きついた。

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