プラチナの王子様 (ページ34)

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扉を開けると、びくりと人影が動いた。

「ドラコっ！」
「げ、真緒ーー」

顔をしかめたユニフォーム姿のドラコに、そういえば箒から投げ出されていたと思い出した真緒は「まだどこか痛むの？」と尋ねた。

「ああーー…あちこち痛む」

アイスグレーの瞳がゆらゆらと動く。
ばればれの嘘だった。

「ねえ、この教室って窓あるの？」
「窓？ーーー窓というか、硝子戸ならあそこと、あそこにあるだろ…」

ドラコが指差したのは教室の天井に程近い、真緒の手に届かないところだ。
しかも恐らく、窓じゃなくて隣の研究室との硝子戸だ。

「あの、陰険教師めーー…」
「君、何しに来たんだよ」
「罰則、その硝子戸の拭き掃除」
「どうやって磨くんだい、君の身長じゃ到底無理だし、机の上に乗っても届かないだろ？」

ドラコの言うことは尤もだ。
(こんなの、宙に浮けないとーーー…あ！)

「ねえ！」
「何だよ」

つまらなそうに真緒を見たドラコに手を合わせた。

「お願い、箒に乗せて！」
「……今の僕に箒に乗れって言うのか？」
「私、箒苦手なの」
「マホウトコロの生徒が？あっちはクィディッチが盛んだろう」
「だからって皆が得意ってことにはならないわ、兎に角ーードラコ、上手だったし二人乗りくらい出来るでしょ？」

真緒が「ね？」と頼むと、「ちょっと待ってろ」と言ってドラコは駆けて行った。
少しして、ロープに着替えたドラコが箒を持ってやって来て真緒の目の前に立った。

「高くつくぞ」
「ありがと！」

ドラコの後ろで箒に跨がり、腕を回す。
「くっつくな」「くっつかないと落ちるわ」という問答を繰り広げて気付いた。

「ーー掃除が出来ない」
「…仕方ない、君が前に乗れ」

ドラコはすっと降り立つと、片手で真緒を抱えるようにしてもう片方の手で器用に箒を動かして浮いた。

「凄い、前見ずに操縦できるの？」
「見えてる。早く掃除しろ」

「ちょっと近くない？」
「離すぞ」
「待っ、やだやだ離さないで」
「暴れるな！それにくっつくな！」

騒がしい二人が、たった二つの小窓の拭き掃除を終えたのは二十分後のことだった。

「上手だったってーー…本気で言ってるのか？」

真緒のバスケットのお菓子を弄びつつ、ドラコがぽつりと言った。

「そりゃ、ブラッジャーに追いかけられながらあんなジグザグの柱をすり抜けて、スニッチを見失わずに追いかけるなんてーーー」

私には無理、と真緒は肩を竦めた。