手のひらの上でサンバを踊るな【あんスタ】

この色なに色■■■■色 ページ23

『この前は疲れました〜！』
「あはは、星見でも振り回されることあるんだなーって俺も驚いたよ」



土曜日の朝、ロビーにて。
まだまだESの構造を覚える気配のないAを真緒が手を引き歩いていた。

AがP機関に就いて数日。そう、僅か数日なのに早くも真緒は他の人達からAの保護者的な扱いを受けている気がしてならない。



「(どう考えても初日に世話を焼きすぎたのが敗因だよな……いやでも俺、こういう妹っぽい子ほっとけないんだよな〜)」
『真緒さん真緒さん、スタプロ事務所ってこっちじゃなかったですか？』
「そっちは地下倉庫！！お前どこ行く気？！」



いや、妹の方がまだ賢いな……と、心の中でさっきの発言(？)を訂正する。

なんというか、Aの行動や言語は幼児みたいなものなのだ。少しでも目を離したら何かやばいものを口に入れてそうな危なっかしさだ。
可愛いとか思う余裕なんてない。目を離したら死ぬ。こいつが。



「やっぱ星見って兄姉いたの？」
『多分いたんじゃないですかね〜？まぁ私は施設出身だしお父さんに拾われる以前の記憶ないから知らないですけど！』
「びっくりした急に重いな！というかなんかごめんな！」


Aは笑顔で気にしてないと言ったが、彼女の場合本当に気にしていないんだろう。

真緒はそれに少し安心しつつも慌てて話題を変える。


「それより、星見がプロデューサーとしてちゃんと働くのっていつからだっけ？」
『火曜からですね。まずはスタプロ中心で担当するっぽいです』
「へぇ、そうなのか。じゃあ俺達のプロデュースもよろしくな〜」



と、口では言いつつも「やっぱりな」と真緒は心の中で呟いた。

上層部ほどではないが、真緒も星見の有用性については十分理解しているつもりだ。

正直こんなやばい子を扱いきれるのか？という疑問の方が大きいが、そうしてでも星見を手元に置くことで受ける恩恵が大きいこともよく知っている。
だからスタプロが最優先でその恩恵を受けられることもだいたい察していた。




『あっここですよね！着きました！』
「あっ馬鹿、そこは空中庭園！ああもう、蓮巳先輩でも無理だろこの子の制御！」



その制止の声も聞かず走り出していくAをどこか諦めたように追いながら真緒は叫ぶ。

実は今日は英智が事務所に顔を出す日なのだ。Aのテンションの高さはそれ故である……が、真緒はそんなこと知るよしもない。



「って前見ろ星見！ぶつかる！」
「うわぁっ？！」

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