手のひらの上でサンバを踊るな【あんスタ】

Melody on the hand ページ6

_No side





「で、演技はこれぐらいで良かったですか？英智さま」
「うん、協力ありがとう、弓弦、桃李、渉」



先程Aが出ていった扉の眺めながら、天祥院英智はいつもの笑顔でそう言った。




「全く……まさかライブの直前になって私に“暴漢のふりをして坊っちゃまに襲いかかるふりをしろ”と言われるとは思ってなかったですよ」
「うん、それは本当にごめんね。でもあの子と接触するにはこれしかなかったんだ」


そう、Aがねじ伏せた暴漢の正体。それは舞台袖にいたと見せかけて姿を変えた伏見弓弦である。


「ふふ、冗談です。わたくしも理解しておりますよ。だって、“全ては星見の技術を手に入れるため”ですからね」
「うーん、あんまりよく理解出来ないんだけど、あいつって本当に有用なの？それっぽく見えなかったけど」
「有用だよ、凄く。桃李ために少し説明しようかな」



そう言って英智がスマホに表示したのは大きな赤い文字で“Hoshimi”と書かれたニュースサイトの1ページ。
……そして、Aの父の顔写真。



「あの子の父親、星見プロデューサーは日本では知名度が低いけど凄く優秀なプロデューサーでね。彼が運営する会社も“日本の企業と言えば”という話題で必ず名前が上がるほどに有名だったんだよ」
「ええ、姫君は知らないようですが本当に優れた技術を有していたんですよ！……倒産後に、“星見”の社員の争奪戦が起こるほどには」
「ええっ！？なにそれ！？」



英智が次に表示したのは海外の新聞記事の写真。そこでも真っ先に目に飛び込んでくるのは“Hoshimi”の文字。
その記事には世界の各会社からの星見の倒産を嘆く声、残った星見の社員を欲する声が綴られていた。



「ええ……そんなに凄いんだ、星見って」
「うん、ESも数人手に入れたんだけど全員使い物にならなくてね。この際社員じゃなくて跡継ぎ娘に来て貰った方が早いんじゃないかって気づいたんだ」
「軽い、軽いよ英智さま……でも、英智さまがわざわざ弓弦にあんなことさせた理由がようやくわかったよ。跡継ぎのあいつさえ利用すればESは大丈夫ってことでしょ？」



わざわざ社員を取らなくとも、幼少期から星見の技術を一番近くで見てきた、その技術を継承してきた彼女さえいれば。

その問いに英智はまたにっこりと微笑んだ。







「そう。まさか本人にその自覚が一切ないことには驚いたけどね………まぁ、せいぜい僕達の手のひらで踊ってね、星見ちゃん」






．

▼プロデューサー情報→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す