星を見る人 ページ47
「(今までこいつが考える企画はファンとアイドルの距離も遠かった。まるでアイドルを神格化してるみたいで古臭いやつばっかだったのに……どう考えてもパクっただろ。しかもどっかで見たことある気がするし)」
今回の企画はファンとアイドルの距離が近く、演出も今までとは打って変わって派手。MCの時間もだいぶ長い。
こういう企画をだいぶ前に見たはずなのに思い出せない。
リーダーが思い出そうとするうちにも副リーダーはAに詰め寄る。
「なぁ星見、いくら出来ないからって他人のアイデア持ってくんのはどうかと思うけど?」
「おいやめろって!」
『ひ、人のじゃないです!』
自分よりずっと体格の大きい男に睨まれたAは、可哀想なぐらい顔を真っ青にしながら必死に言葉を紡ぐ。
『あの、今回の企画はあたしが“こんなライブだったら楽しいだろうな”って言うのをつめこんだんです。だから多分いつもよりだめだめで、』
「(こんなライブだったら、って……)」
その瞬間、彼は思い出す。
この企画に感じた既視感の正体を。
あれは確か自分の夢ノ咲入学が決定したばかりの頃、あの制服に袖を通して確かにこんなライブをしたいと思ったのだ。
彼女の考えた企画はまさに何も知らなかった頃の自分が夢想したそれだった。
……でもそれはこの業界の現実を目にして、「実現できるはずがない」とあの日確かに手放したはずのものだった。
『べ、別のもちゃんと用意してますから!本当に不出来な事この上ないですよね、お目汚しすみません……』
「なぁ、星見」
『へ?』
恥ずかしそうに、けれども宝物のように企画書を抱える彼女の目をまっすぐ見て、ひとりの新人アイドルは言う。
「これ、出来るの?実現可能?」
『はい、可能なものですが……え、あの?』
上出来か、と聞かれれば首を縦に振ることは出来ない。あんずの企画のように革新的でもない。
けれど、Aの考えた企画は「叶わないから」と、「実現可能なはずがないから」と誰かが手放した夢想の具現だった。
誰よりも幼いが故に、誰もが幼心に夢見ていながら、成長するにつれ忘れてしまったそれを憶えていた。
「俺、このライブがしたい。プロデューサーが“楽しいだろうな”って思ったこのライブを俺たちで成功させたい。その、協力してくれるか?」
その言葉に星見の後継者でも何でもない、ひとりの女の子は大輪の花が咲いたみたいに笑った。
『はい!もちろんですっ!』
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紅鮭@くじら(プロフ) - 塩おにぎりさん» わ〜い!まじですか女の好みが合いますね!!!文字制限かかるほどの感想本っ当嬉しいです( ・ ・̥ )♡今月中には続編に移行する予定なのでそちらもよろしくお願いします!! (2022年8月21日 19時) (レス) id: f1236c4d6f (このIDを非表示/違反報告)
塩おにぎり - あ〜、好きだぁ!敬人ぉ!英智ぃ!星見ちゃあん!!ってなりましました。星見ちゃん可愛い。あぁいう性格の子大好物です。ハラハラドキドキニヤニヤしながら見てます。文章もすごく好きです!更新頑張ってください!まだまだ言いたいことあるのに文字数が…… (2022年8月21日 15時) (レス) @page48 id: 783bc2bad6 (このIDを非表示/違反報告)
紅鮭@くじら(プロフ) - 瑞花さん» 物書きとしてこれ以上ないほど嬉しいコメントありがとうございます!!なんかもうこっちが泣きそうです(;;)瑞花さんの期待に応えられるよう頑張ります!! (2022年8月13日 10時) (レス) @page38 id: f1236c4d6f (このIDを非表示/違反報告)
瑞花 - うわあああなんか辛い…2人とも(あんずと夢主)辛いんですが…涙なしに見れないんですが……えぇ、ちょ、…ええええ(動揺)これからいい方向に進んでいくことを願う…ううううう更新頑張ってくださいっ…!!(涙ボロボロ) (2022年8月13日 0時) (レス) @page38 id: ffe19b4490 (このIDを非表示/違反報告)
紅鮭@くじら(プロフ) - 結さん» マヨさんはどうしても夢主とエンカさせたかったから出しましたwマヨさんいいですよねわかります……!嬉しいコメントありがとうございます!! (2022年7月20日 22時) (レス) id: f1236c4d6f (このIDを非表示/違反報告)
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