雨乞い ページ17
雨は、大地に潤いを与えてくれる
雨が降るから、川が流れる
雨のお陰で、生物は生きて行ける
雨よ、降れ降れ――
｢うわ〜濡れたぁ！｣
いきなり降り出した雨にやられて、ずぶ濡れになりながらやっと雨宿り出来そうな屋根の下を見つけて駆け込んだ私。
昨日も雨が降ったから、折り畳み傘を今日の朝、干したまま出て来たら今日も降られてしまった。
｢あ〜あ、毎日雨じゃあ、嫌になっちゃう｣
濡れた鞄をタオルで拭きながら、次から次へと厚く重い、どんよりとした鈍色の空から降ってくる雨粒を眺めて呟く。
ザァザァという音を聞きながら、辺りを見渡した。
いきなり降ったから、私みたいに慌てて走っている人も居れば、天気予報を見てきたのか、自分の傘をちゃんとさしてる人も居る。
よく見ないで来たから何も考えてはいなかったけど、ここは公園の一角にある屋根の下にベンチがおいてある所だ。
鞄を机の上に置いて、自分はベンチに腰掛ける。
ただ、ぼ〜っと景色を眺めているのもなかなか楽しい。
音は何だか遠くに聞こえて、人の動きも自分は見ているようで見ていない、不思議な感覚。
自分が何かを考えているのかすら、怪しい。
意識が、自分からどんどん離れていくような気がした。
｢おい、お主はどうしてここに居る？｣
不意に話し掛けられ、意識が鮮明になって自分の中へと戻ってくる。
私を覗き込んでいたのは、20歳過ぎくらいの男性だった。
｢雨宿りをしているの。えぇと、誰？｣
｢あぁ、すまない。私は涼雨｣
よろしく、と言って彼、涼雨は手を差し出してきた。
怖ず怖ずと私も手を出すと彼は手を取りながら嬉しそうに笑った。
｢さっきの、“どうしてここに居る”ってどういう事？ここって入っちゃいけなかったの……？｣
｢いいや、何でもないよ。お主は傘が無いのか？｣
｢ええ、そうなの｣
｢ならば、これを使うといい｣
涼雨が差し出したのは白と京紫色の和傘だった。
｢いいよ、涼雨が濡れちゃうでしょう？｣
｢気にしなくていい。どうせ、まだここに居るからな｣
｢誰かと待ち合わせ？｣
｢そんなところだ｣
｢……じゃあ、お言葉に甘えて。また会える？｣
｢……雨の日になら、ここに居るかもしれん｣
｢わかった。じゃあ、その時に返すね｣
｢……あぁ……｣
最後はあやふやな答えだったけど、まあ、何となくまた会える気がしたから、何も言わず、私は涼雨の傘をさして帰路についた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 7人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「短編集」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
くるみ(プロフ) - MIZOREさん» はじめまして！コメント&応援ありがとうございます。これからも二人でいろんなお話を出していけたらと思ってますので、よろしくお願いします。 (2017年9月13日 18時) (
レス) id: 1b7b0b02d0 (このIDを非表示/違反報告)
MIZORE - 暁さん、くるみさん、はじめまして!とても感動できる内容で、読みやすかったです。更新頑張ってください! (2017年9月13日 18時) (レス) id: a68bb744ad (このIDを非表示/違反報告)
暁(プロフ) - 星月夜さん» 心あたたまるコメントをありがとうございます！今後も頑張って二人で更新していこうと思うので、この作品をよろしくお願いします(*- -)(*_ _)ペコリ (2017年9月11日 7時) (レス) id: 23374c4c5d (このIDを非表示/違反報告)
星月夜 - 短編集なので当たり前なのですが、一つ一つが簡潔に書かれているので読みやすいです！最初のお話は本当に感動しました！ (2017年9月10日 23時) (レス) id: b0ad28a90c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：くるみ＆暁 | 作者ホームページ：
作成日時：2017年9月10日 12時
