【短編集】夢を見た (ページ31)

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帰ってからは絶望感で消えてしまおうかとも思ったけど、次第に私が相手に期待を抱き過ぎていたこと。
そして、相手に重いことを言って負担に思わせたのは間違いなく自分だということに気づいたのはイベントから随分経った頃だった。

ホンジュンさんの曲は相変わらず活力になっていたが彼を見ることはやめた

彼の言う私を大切にしてくれる人を探してみようと思った。

学校の先生に頼ってみた。
ダメだった。

学校以外のコミュニティに参加してみた。
話せる人ができた。

恋人を作ってみた。
私の体だけが目当てだった。

努力をしても、私を大切だと言ってくれる人が現れない現実にうちひしがれてもう限界だった。

一目だけ会いたかった。

ホンジュンさんをみたかった

サイン会とやらに行った時にはもう、大学生だった私は学業とアルバイトとうまくいかない現実に少しやつれていた。

それでも彼は数年ぶりにも関わらず、おう。Aちゃん。と名前を言い当てた。

『どう？見つかった？その様子だとだいぶ無理してるみたいだね』

『無理して探さなくても、ここに君を大切に思う人間が一人居ることをずっと忘れないで欲しい』

そう言われて、限界だった。
この世に私の味方が居た。
その嬉しさに涙がぽたぽた溢れてきた

『大丈夫。嘘じゃないよ。これはAちゃんと最初に会った時から思ってる本心だよ。』

サイン会のブースを抜けた後しゃがみ込んで泣いた

この世にも私を大切に思ってくれる人が居た。

ただ一人、声を出して泣いた

今は一人かもしれない。これから増えていく希望さえ感じた。

落ち着いた頃に

「私にも大切に思ってくれる人がいたんだ」

と声に出した途端胸の奥がほっと落ち着いて、温まった気がした。

end