小悪魔な君と自称天使な私【桐嶋郁弥】

噂話（4） ページ5

さて、と…

「あーえっと、とりあえずこの紙に記入してもらってー…あとは熱計る…かな。」

保健室に置いてあるクラスや症状などを書く紙を渡す。

体温計は向こうの机にあったはず…

ソファーから離れて体温計を探すが中々見つからない。

「あれー？」

別の場所だったかと思い、机の反対側にある棚に手を伸ばそうとすると不意に声を掛けられた。

「…あの、多分熱ないんで、平気です。」

「え、ほんと？」

男の子が俯いていた顔を上げる。

光に当たっていなくてわからなかったが、その顔色は真っ白で確かにどちらかというと低体温っぽい感じがする。

貧血でも起こしたのかな？

「あー…だるい？」

「いえ、頭痛いだけです。

…たまにやるんで慣れてます。」

んー…

「そしたらとりあえずベッドで横になりなよ。」

一番右端のベッドを指差す。

「先、寝てていーよ。

氷枕とか持ってくし。」

そう言うと男の子はフラフラとベッドに向かっていく。

それを確認した私は保健室のはじにある冷蔵庫へと向かい、氷枕を取り出す。

ベッドに近づくと記入された紙が横の棚の上に置いてあった。

「桐嶋…郁弥？」

やはり聞いたことのない名前だ。

転校生で決定だろう。

「あー桐嶋、くん？

これ使ってー」

声を掛けると桐嶋くんは顔を上げた。

「ありがとう、ございます…」

その顔がさっきよりも白くなっていて心配になってくる。

「大丈夫？

何かしてほしいことあったりしない？」

目を覗き込んで言うと桐嶋くんはこちらをじーっと見てくる。

なんだろうとハテナを飛ばしていると頭から毛布をかぶりぼそぼそと言った。


「手………握っててもらえませんか？」

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